北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)氏を検索すると、「黒電話」という独特な愛称が見つかる。政治ニュースやミサイル発射の報道で目にする人物が、なぜ昭和の家庭を思わせる黒い電話機に例えられるのか。その理由は、頭頂部にボリュームを持たせ、側頭部を短く刈り上げた特徴的な髪型にある。
この呼び名が日本のインターネット上で話題になった経緯をたどると、2015年2月の髪型報道が大きな節目として浮かび上がる。祖父・金日成(キム・イルソン)主席を意識したとされる外見、「覇気ヘア」という呼称、南北ホットラインとの関係など、関連する話題には事実と推測が混在している。2026年10月時点の報道も踏まえ、愛称の由来から現在の髪型までを整理する。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「黒電話」の主な由来は、金正恩氏の角ばった髪型と、昔ながらの黒電話の受話器を連想させるシルエットにある。
- 要点2:2015年2月のJ-CASTニュースなどが、日本のSNSで髪型と「黒電話」が結び付けられていたことを報じている。
- 要点3:祖父・金日成氏を意識したイメージづくりは報道で指摘されているが、南北ホットラインが愛称の由来だったと裏付ける資料は確認できない。
【理由】金正恩が「黒電話」と呼ばれるのは髪型が受話器に似ているから
「黒電話」と呼ばれる最大の理由は、金正恩氏の髪型と、黒いダイヤル式電話機の受話器を連想させる形状にある。
金正恩氏の特徴的な髪型は、側頭部を高い位置まで短く刈り上げ、頭頂部の髪を後ろに流したり、角ばった形に整えたりするものだ。とくに2015年前後に注目されたスタイルでは、上部の髪が横方向にも張り出し、全体として四角形や台形に近い輪郭を作っていた。
一方、昔ながらの黒電話は、本体の上に受話器を横向きに置く構造を持つ。黒い受話器の厚みや直線的な輪郭が、金正恩氏の頭部のシルエットと重なって見えることから、ネット上で両者を結び付ける発想が生まれた。
2015年2月20日付のJ-CASTニュースは、金正恩氏の新しい髪型がインターネット上で話題になったことを報道。日本のTwitter上で「黒電話の受話器感ある」といった反応が出ていたことも紹介した。愛称の成り立ちを考えるうえで、当時の反応を記録した具体的な報道の一つだ。
重要なのは、黒電話という言葉が、北朝鮮の正式な称号でも、金正恩氏本人が名乗る呼称でもない点である。外見上の特徴を、身近な物にたとえた日本語圏のネット上の俗称だ。
また、この呼び名は単なる髪型の説明にとどまらない。金正恩氏の政治的なイメージや北朝鮮をめぐるニュースと一緒に使われるため、風刺や揶揄の意味合いを帯びることもある。
【いつから?】2015年2月の髪型報道が広まるきっかけに
金正恩氏が「黒電話」と呼ばれ始めた時期を考えるうえで、具体的な手掛かりとなるのが2015年2月の報道だ。ただし、ネット上の俗称には明確な命名者や公式な誕生日があるわけではなく、最初に使った人物まで特定できるわけではない。
2015年1月の新年演説では、頭頂部を盛り上げた角刈り風の髪型が確認された。同年2月18日には朝鮮労働党中央委員会の会議に出席し、その写真が翌19日付の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」の1面に掲載された。
この写真をきっかけに、日本のニュースサイトやSNSで髪型が話題になった。J-CASTニュースは2月20日、側頭部の刈り上げを維持しながら、上部の髪を盛った新しいスタイルを取り上げた。CNN日本語版も同日、金正恩氏が髪型を一新したと報じている。
こうした報道で、特徴的な髪型そのものがニュースの話題となり、黒電話の受話器を思わせるという連想も広く紹介された。さらに2017年には、Record Chinaが、日本で金正恩氏を「黒電話」と呼ぶネット上の愛称が韓国のネット掲示板でも話題になったと報道している。
この経緯からは、2015年2月が日本語圏で愛称を確認できる重要な節目であり、その後、国境を越えてネット上の話題として知られるようになったことが分かる。ただし、2015年が絶対的な発祥年だと断定することはできない。
【髪型の変遷】2009年から2026年までの特徴を時系列で整理
金正恩氏の髪型は、現在知られているスタイルが最初から完成していたわけではない。後継者として公の場に登場した時期から、頭頂部を整えた髪型が定着するまでに変化が見られる。
韓国メディアの過去の報道や、当時の公式写真を基に整理すると、次のようになる。
| 時期 | 髪型・外見の特徴 | 報道から分かること |
|---|---|---|
| 2009年初め | 前髪を下ろし、額の一部を隠したスタイル | 韓国紙「朝鮮日報」日本語版の2012年報道で、後年の髪型との違いが紹介された。 |
| 2010年9月 | 頭頂部を整え、側頭部を短くしたスタイルが目立つようになる | 後継者として公式に姿を現した時期。祖父・金日成氏との外見の類似も報道で指摘された。 |
| 2014年 | 前髪を後ろに流し、耳の上を短く刈り上げるスタイル | 「覇気ヘア」という呼称が報道で紹介され、北朝鮮の若者の間で人気があるとの情報も伝えられた。 |
| 2015年1~2月 | 頭頂部を盛り上げた角刈り風のスタイル | 新年演説や党会議の写真が注目され、「黒電話」の愛称につながる視覚的な特徴が広く話題になった。 |
| 2016年以降 | 側頭部を極端に短く刈り上げ、上部を整えたスタイル | その後も髪型には細かな変化があり、トップのボリュームや輪郭が写真によって異なる。 |
| 2026年10月時点 | 従来から知られる短い側頭部と整えた頭頂部のスタイルが基本 | 直近の報道は外交・軍事関連の動向が中心で、髪型を大幅に変更したとする確かな報道は見当たらない。 |
この変遷で注目したいのは、2015年の髪型が、単に髪を短く刈ったものではなかったことだ。側頭部と頭頂部のコントラストが強く、輪郭がはっきりしていたため、写真を通して特徴が伝わりやすかった。
また、髪型は撮影角度、整髪料、照明、髪の伸び具合によっても印象が変わる。過去の写真と現在の写真を比較するときは、こうした条件の違いも考慮する必要がある。
【金日成との関係】「覇気ヘア」は祖父を意識したイメージづくりなのか
金正恩氏の髪型を理解するうえで欠かせないのが、祖父である金日成主席との外見上の類似だ。金正恩氏は2010年に公の場へ姿を現した際、若い頃の金日成氏を思わせる体型や髪型、服装などが注目された。
2012年12月27日付の朝鮮日報日本語版は、2009年の金正恩氏と後年の姿を比較し、髪型や体型が変化したと報道した。同紙は韓国側の当局者の説明として、金正恩氏を祖父に似せるため、短期間でイメージチェンジが図られたとの見方を紹介している。
2012年の金正恩氏の初演説をめぐる報道でも、側頭部を刈り上げた髪型や人民服などが金日成氏のスタイルを踏襲していると指摘された。2014年には、金日成氏との類似を意識したイメージづくりという観点から、髪型や身振り、笑顔などが分析されている。
北朝鮮では、建国の指導者である金日成氏の歴史的な権威が、政治的な正統性を示すうえで大きな意味を持つ。そのため、後継者が祖父を思わせる外見を採用することには、血統の継承や指導者像の演出という政治的な意味があったと考えられる。
ただし、「黒電話」と呼ばれる髪型そのものが、金日成氏の髪型を意図的に再現した結果だと本人や北朝鮮当局が公式に説明したわけではない。祖父との類似は報道や分析で繰り返し指摘されているが、特定の髪型を採用した理由については、外見上の事実と政治的な解釈を区別する必要がある。
「覇気ヘア」という言葉も同様だ。2014年8月のRecord Chinaは、聯合ニュースなどを通じて伝えられた情報として、前髪を後ろに流し、耳の上を短く刈り上げる髪型が北朝鮮の若者の間で「覇気ヘア」と呼ばれていると紹介した。これは髪型の特徴やイメージを表現した呼称であり、「黒電話」と同じ意味の言葉ではない。
【南北ホットライン説】黒電話の由来は北朝鮮との直通電話なのか
「黒電話」という愛称については、金正恩氏の髪型ではなく、韓国と北朝鮮をつなぐ南北ホットラインに由来するのではないか、という疑問も生まれやすい。しかし、両者を直接結び付ける確かな根拠は見当たらない。
南北ホットラインとは、南北間の緊張緩和や意思疎通のために設けられた専用の通信経路を指す。軍事当局間の連絡線や南北連絡事務所の通信設備、首脳間の直通電話など、目的や設置場所の異なる複数の通信手段が存在してきた。
2018年4月には、韓国の文在寅大統領と金正恩委員長の執務室を結ぶ首脳間ホットラインが開通した。韓国大統領府は電話機の映像などを公開し、南北首脳が直接意思疎通するための通信手段として注目を集めた。
一方、2020年6月の聯合ニュースは、青瓦台に設置された首脳間ホットラインの電話機を写真付きで紹介している。こうした通信設備が報道で目立つことはあっても、それが金正恩氏の「黒電話」という愛称の発祥だったと示す証拠にはならない。
南北の通信事情については、聯合ニュースが2024年4月、北朝鮮側が2023年4月7日以降、定時の連絡に応じていないと報じた。これは外交・軍事上の通信状況に関する話であり、髪型を由来とする俗称とは別の問題だ。
つまり、南北ホットラインと「黒電話」は、どちらも電話を連想させるため関連付けられやすいものの、愛称の直接的な由来として報道で確認できるのは、髪型と黒電話の受話器との類似である。ホットライン説は、言葉の響きから連想された可能性と、歴史的に裏付けられた由来とを分けて考えるべき話題だ。
【2026年最新】金正恩の現在の髪型と「黒電話」のネット上の評判
2026年10月時点で金正恩氏の髪型を確認する際には、直近の公的な活動を報じた写真と、過去の髪型報道を分けて見ることが重要だ。
ロイター通信は2026年10月、金正恩氏による軍事関連施設の訪問や中国訪問などを報じている。これらの報道の中心は外交・軍事・対中関係であり、髪型を大幅に変更したというニュースが主要な話題になっているわけではない。
したがって、2026年の髪型については、2010年代から知られる短く刈り上げた側頭部と、整髪された頭頂部という基本的なスタイルが引き続き認識されていると整理できる。ただし、特定の日の写真だけで髪型の細部がまったく変わっていないと断定することはできない。
ネット上の評判についても、愛称の広まり方には特徴がある。2015年のJ-CASTニュースが紹介した日本のTwitter上の反応では、黒電話の受話器を連想する声のほか、アニメやゲームのキャラクターを思わせるという反応も取り上げられた。2017年のRecord Chinaも、韓国のネット掲示板で日本の愛称が話題になり、似ているという反応が出たことを報じている。
こうした反応に共通するのは、政治的な評価を長い文章で説明するのではなく、写真を見た瞬間に伝わる形の類似を使っている点だ。画像と短い言葉を組み合わせれば、元のニュースを詳しく知らない人にも意味が伝わりやすい。これが「黒電話」という呼び名がネットミームとして広がりやすかった理由の一つと考えられる。
ただし、ネット上の評判を一枚岩として扱うのは適切ではない。ユーモアとして使う人もいれば、政治的な風刺や批判の意図で使う人もいる。個々の投稿の意図は文脈によって異なり、愛称が広まったこと自体から、金正恩氏への評価全体を推定することはできない。
また、「黒電話」は金正恩氏を指す俗称として使われる言葉であり、一般的な電話機を意味する本来の語義と、ネット上の比喩的な用法は異なる。記事やSNSでこの言葉を見かけたときは、電話機そのものについての話なのか、金正恩氏についての話なのか、前後の文脈から判断するとよい。
【プロの結論】「黒電話」は髪型から生まれたネット上の愛称
金正恩氏が「黒電話」と呼ばれる理由は、特徴的な髪型の輪郭が昔ながらの黒電話の受話器を連想させるためだ。2015年2月のJ-CASTニュースやCNN日本語版の報道は、この髪型が当時のインターネット上で注目されたことを示す重要な記録となっている。
「覇気ヘア」は髪型の特徴を表す呼称であり、「黒電話」はその外見を電話機にたとえた俗称だ。また、金日成氏との外見上の類似は後継者としてのイメージづくりという観点から報じられてきたが、髪型の具体的な採用理由については、報道された事実と分析上の解釈を区別する必要がある。
南北ホットラインについても、実際に設置・運用されてきた通信手段であることと、「黒電話」という愛称の由来であることは別問題だ。直通電話の存在を理由に愛称が生まれたとする説明には、直接的な裏付けがない。
この話題から得られる教訓は、ネット上で広く使われる言葉ほど、発祥の経緯や意味が単純化されやすいということだ。いつ頃の報道で使われたのか、どの媒体が何を伝えたのか、そして事実と推測がどこで分かれるのかを押さえれば、話題性の高いネットスラングも冷静に読み解ける。
【金正恩黒電話】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:金正恩が「黒電話」と呼ばれ始めたのはいつからですか?
A1:日本語圏での広がりをたどるうえでは、2015年2月が重要な節目です。J-CASTニュースが当時の髪型報道とSNS上の反応を紹介しています。ただし、ネット上で最初に使われた日時や人物は特定されていません。
Q2:「覇気ヘア」と「黒電話ヘア」は同じ意味ですか?
A2:厳密には異なります。「覇気ヘア」は、前髪を後ろに流し、側頭部を短く刈り上げた髪型を表す呼称として報道で紹介されました。「黒電話」は、その特徴的な髪型を黒電話の受話器にたとえたネット上の愛称です。
Q3:金正恩の髪型は祖父・金日成の髪型をまねたものですか?
A3:両者の外見が似ていることは、韓国メディアなどが繰り返し指摘しています。後継者としてのイメージづくりという見方もありますが、現在の髪型を採用した具体的な理由が本人や北朝鮮当局から公式に説明されたわけではありません。
Q4:「黒電話」という愛称は南北ホットラインが由来なのですか?
A4:南北ホットラインは実在する通信手段ですが、それが愛称の由来だったと裏付ける資料は確認できません。2015年の報道で紹介されたのは、金正恩氏の髪型と黒電話の受話器の形が似ているという連想です。
Q5:2026年現在、金正恩の髪型は変わっていますか?
A5:2026年10月時点で、髪型を大幅に変更したとする確かな報道は見当たりません。従来から知られる、側頭部を短く刈り上げて頭頂部を整えるスタイルが基本とみられます。ただし、写真ごとの細かな違いまで否定することはできません。
まとめ:愛称の由来と政治的事実を分けて理解する
金正恩氏の「黒電話」という愛称は、2015年前後に話題になった特徴的な髪型と、昔ながらの黒電話の受話器を連想させる形状との類似から広まった。日本のニュース報道やSNSでの反応をたどることで、その呼び名が広く知られるようになった経緯を理解できる。
一方、祖父・金日成氏との髪型の類似には政治的なイメージづくりという分析があり、南北ホットラインは別個の外交・軍事上の通信手段である。両者を混同せず、確認できる報道と推測を分けて読むことが、ネット上の話題を正確に理解するための判断基準となる。
2026年以降も金正恩氏の外見がニュースやSNSで話題になる可能性はある。しかし、「黒電話」という愛称の意味を理解するうえで最も確かな出発点は、政治的な陰謀説ではなく、2015年に報じられた髪型とネット上の視覚的な連想なのである。 (出典: 金正恩 黒 電話(Yahoo!ニュース))