「自分の親のようにはなりたくない」「子どもを育てる自信がない」「自分が親になったら、同じ苦しみを子どもに与えてしまうかもしれない」。親との関係に傷ついた経験があると、結婚や出産を考えたときに、こうした不安が浮かぶことがあります。
毒親育ちで子供はいらないと感じる背景には、過去の家庭環境による心の傷、親になることへの恐怖、自分の人生を守りたいという気持ちなど、さまざまな事情があります。一方、子どもを望まない理由がすべて親との関係にあるとは限りません。2026年9月に公表された国立社会保障・人口問題研究所の最新の出生動向基本調査でも、結婚しても子どもを望まない未婚者が一定数いることが示されています。大切なのは、周囲の期待に合わせることではなく、自分が何を望み、何に不安を感じているのかを整理することです。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 理由:過去の家庭環境やトラウマ、育児への不安、自由な生活を守りたい気持ちなどが関係する場合がある。
- 負の連鎖:虐待や不適切な養育を経験した人が、必ず自分の子どもにも同じことをするわけではない。
- 選択:子どもを持たない人生も、将来の気持ちが変わる可能性も尊重してよい。今すぐ結論を出す必要はない。
【なぜ毒親育ちだと子供はいらないと感じるのか?主な5つの理由】
親との関係に苦しんできた人にとって、子どもを持つことは、単に新しい家族が増えるという話ではありません。自分がかつて経験した家庭を思い出したり、親から受けた言動を繰り返す可能性を考えたりすることで、出産や子育てそのものが怖くなることがあります。
ただし、「毒親育ち」は、一般に親の支配的な言動や過干渉、暴言、ネグレクトなどによって苦しんだ経験を表す俗称です。医学的な診断名ではなく、家庭環境や本人の受け止め方も一人ひとり異なります。そのため、子どもを望まない理由も一律には説明できません。
1.自分が経験した苦しみを子どもに味わわせたくない
親から否定的な言葉を浴びせられたり、失敗を許されなかったり、過度に行動を制限されたりした経験があると、「自分の子どもには同じ思いをさせたくない」という気持ちが強くなることがあります。
その思いが、「子どもを傷つけるくらいなら、最初から産まないほうがいい」という考えにつながる場合もあります。これは、自分の過去を繰り返したくないという切実な気持ちの表れです。ただし、子どもを持たないことだけが、その過去から自分を守る方法とは限りません。
2.自分も毒親になるのではないかと怖い
子どもが思いどおりに動かないとき、感情を抑えられるだろうか。自分が親から言われて嫌だった言葉を、無意識に口にしてしまわないだろうか。こうした不安は、親になる自信がないと感じる大きな要因になり得ます。
特に、子どもの頃に怒鳴り声や威圧的な態度を日常的に経験していると、育児中の泣き声や反抗的な態度が、過去の記憶や強いストレスを呼び起こすのではないかと心配することもあります。
3.子育てに必要な愛情や接し方がわからない
安心して甘えられる環境を知らずに育った人は、子どもにどのように接すればよいのか、困ったときに誰を頼ればよいのか、具体的なイメージを持ちにくい場合があります。
子どもの気持ちを受け止めることと、何でも要求どおりにすることの違いがわからない。叱ることと傷つけることの境界が不安になる。こうした戸惑いから、育児を自分には難しいと感じることがあります。
4.親になることで、自分の生活や心の余裕を失いたくない
家庭内で親の機嫌をうかがい、家事やきょうだいの世話などを過剰に担ってきた人は、子育てを「また自分が誰かのために我慢し続ける生活」と結びつけることがあります。
自分の時間や経済的な自由を守りたい、静かに暮らしたい、誰かの感情に振り回されずに生きたいという希望も、子どもを望まない理由になり得ます。こうした価値観は、それ自体が問題なのではありません。
5.妊娠・出産や、親との関係が続くことに抵抗がある
子どもを持つと、親に孫を会わせるべきなのか、育児に口を出されたらどうするのか、親との関係を再び深めなければならないのか、といった不安が生まれることもあります。
また、妊娠・出産そのものへの恐怖や、身体的・経済的な負担、パートナーとの生活設計などが理由の場合もあります。「毒親育ちだから子どもが嫌い」と単純化せず、どの部分に抵抗感があるのかを分けて考えることが、自分の本音を理解する第一歩です。
【2026年の公的データから考える】子どもを持たない選択は珍しいのか
子どもを望まないと話したとき、「いつか気が変わる」「親になれば考え方が変わる」と周囲から言われ、自分の気持ちに自信を持てなくなる人もいます。しかし、結婚や出産に対する考え方は人それぞれです。
国立社会保障・人口問題研究所が2026年9月11日に公表した「第17回出生動向基本調査」は、2025年6月に実施された全国調査です。独身者調査では有効回答6,756票を集計し、未婚者の結婚や子どもに対する意識などを調べています。
同調査によると、18~34歳の未婚者のうち、結婚しても子どもを望まない人は男女ともに約6人に1人でした。さらに、希望する子どもの数は男性1.64人、女性1.70人で、前回調査の男性1.83人、女性1.79人から減少しています。
ただし、これらは毒親育ちの人だけを対象にした調査ではありません。過去の家庭環境が子どもを望まない気持ちにどの程度影響するかを示す数字ではない点には注意が必要です。一方で、子どもを持つかどうかを考える際には、家庭環境以外にもさまざまな事情や価値観が関係していることがわかります。
| 比較する観点 | 公的資料などからわかること | 自分の選択を考える際の視点 |
|---|---|---|
| 未婚者の子どもへの希望 | 2025年調査では、結婚しても子どもを望まない未婚者が男女とも約6人に1人 | 子どもを望まないことだけで、自分を異常だと考える必要はない |
| 子どもの頃の虐待や不適切な養育 | こども家庭庁の「こども虐待対応の手引き」では、虐待によるトラウマや心身への長期的な影響が扱われている | 過去の経験が今の不安に関係している可能性を理解し、必要に応じて支援を求める |
| 自分も虐待するのではという不安 | 日本小児科学会の「子ども虐待診療の手引き」では、被虐待経験は重要なリスク要因である一方、それだけで将来の虐待が決まるわけではないことが示されている | 不安を運命と決めつけず、感情への対処や支援体制について具体的に考える |
| 将来の気持ちの変化 | 出生動向基本調査では、結婚や子どもへの意識、希望する子どもの数などが調査されている | 現在の気持ちを尊重しながら、将来の自分に変更の余地を残してもよい |
数字を読むうえで大切なのは、子どもを持たない人の割合と、毒親育ちの人が抱える心理的な困難を混同しないことです。公的調査は社会全体の傾向を理解する材料になりますが、個人が子どもを持つべきかどうかを決める答えにはなりません。
【負の連鎖は断ち切れる?】自分も毒親になる不安とトラウマの影響
毒親育ちの人が抱きやすい不安の一つが、親から受けた仕打ちを自分の子どもにも繰り返してしまうのではないか、という恐怖です。自分の親を反面教師にしているつもりでも、怒りや疲労が重なったときに同じ言葉を使ってしまうのではないかと心配することがあります。
子ども時代の虐待や不適切な養育は、成人後の心身の健康や対人関係に影響を及ぼす場合があります。世界保健機関(WHO)は、児童虐待がうつ、不安、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などと関連することや、虐待を受けた子どもが将来、暴力の被害者または加害者になるリスクが高まることを説明しています。
ただし、こうした関連性は、虐待を受けた人が必ず虐待をするという意味ではありません。日本小児科学会の専門的な手引きも、子ども時代の被虐待経験が、本人による将来の虐待を必然的に決めるわけではないと指摘しています。生活上のストレスや孤立、周囲から受けられる支援など、複数の要因を考える必要があります。
過去の経験があることと、将来の行動が決まっていることは別です。自分の感情に気づくこと、つらいときに距離を取ること、困ったときに他者の助けを求めることなどは、将来の選択肢を広げるために役立ちます。
また、子どもの頃に身についた対人関係のパターンは、大人になってからも無意識に表れることがあります。相手の機嫌を過剰に気にする、自分の希望を言えない、失敗すると強く自分を責める、親密な関係になると距離を置きたくなるといった反応です。
こうした反応があるからといって、必ずしも病気であるとは限りません。ただ、過去の記憶がよみがえって日常生活に支障が出たり、強い不安や抑うつが続いたりする場合は、専門家と一緒に経験を整理することも選択肢になります。
そして、負の連鎖を断ち切ることを、必ず自分が子どもを持つことで証明する必要はありません。子どもを持たない選択も、自分の人生を守るという意味で尊重されるべきものです。
【子どもを持たない選択に後悔はある?】今の気持ちと将来を分けて考える
「子どもはいらない」と思っていても、年齢を重ねたときに後悔するのではないか、パートナーとの関係に影響するのではないかと悩む人もいます。一方で、周囲に合わせて子どもを持ち、心身の負担や生活の変化に苦しむ可能性を心配する人もいます。
どちらの未来にも、本人にしかわからない部分があります。子どもを持たない人生に後悔があるかどうかを、誰も一律には予測できません。同様に、子どもを持てば必ず幸せになれるとも限りません。
判断するときは、次の3つの問いを分けて考えてみてください。
- 本当に子どもを望んでいないのか:育児や妊娠・出産に魅力を感じない、自分の生活を大切にしたいなど、恐怖とは別の理由があるか。
- 望みはあるが、不安が強いのか:子どもへの愛情や家庭への憧れはあるものの、自分が親と同じことをしてしまう恐怖が大きいのか。
- 自分ではなく、周囲の期待に反応しているのか:親や親戚、パートナー、世間の価値観に押されて、子どもを持つべきだと思い込んでいないか。
この3つは、必ずしも明確に分かれるものではありません。子どもを望まない気持ちと、親になることへの恐怖が同時に存在することもあります。気持ちが揺れているなら、無理に一つの答えにまとめなくてもかまいません。
また、「今は持ちたくない」と「一生持たないと決めている」は異なる考え方です。将来の気持ちが変わる可能性を残してもよいですし、変わらないと感じているなら、その意思を大切にしてもよいのです。
子どもを持たない選択をする場合は、パートナーと子どもに関する希望を率直に話し合い、生活設計や将来の支え合いについて考えておくと、周囲の期待に振り回されにくくなります。反対に、子どもを望む気持ちがあるなら、不安の原因を一つずつ整理し、利用できる支援を調べていく方法もあります。
【親になる不安との向き合い方】無理に克服せず、自分の気持ちを整理する方法
毒親育ちの経験を乗り越えなければ親になれない、という決まりはありません。過去の出来事をすべて忘れたり、親を許したりすることが、回復の条件でもありません。まずは、現在の自分が何に苦しんでいるのかを理解することから始められます。
1.不安を具体的な言葉にする
「親になるのが怖い」という気持ちを、もう少し細かく分けてみます。たとえば、「怒りを抑えられないのが怖い」「子どもに依存されることが苦しい」「親に育児へ介入されるのが嫌だ」「経済的な余裕がなくなるのが不安」などです。
不安の内容が明確になると、自分の価値観として大切にしたいことと、過去の経験から生じている恐怖を区別しやすくなります。すぐに解決できなくても、言葉にすること自体が整理の助けになる場合があります。
2.親との関係に境界線を引く
子どもを持つかどうかを考えるとき、親からの干渉が大きな負担になっているなら、連絡の頻度や会う回数、伝える個人情報の範囲を見直す方法があります。親との関係を続けるか、距離を置くかは、本人の安全や生活事情を踏まえて決めてよいことです。
親との関係が現在も暴言や支配、脅しを伴う場合は、無理に話し合って理解を得ようとする必要はありません。自分の安全を優先し、信頼できる人や相談機関に協力を求めることも考えてください。
3.親になる場合の支援を、具体的に調べる
将来、子どもを持つ可能性を考えているなら、パートナーと家事・育児の分担、休息時間、経済面、緊急時の相談先などを話し合うことができます。自治体の子育て相談や保健師など、親族以外に頼れる支援を事前に知っておくことも選択肢です。
「完璧な親になれる自信がつくまで待つ」と考えると、いつまでも答えが出ないことがあります。必要なのは、失敗しない保証ではなく、困ったときに立ち止まり、修正し、助けを求められる環境があるかどうかです。
4.子どもを持たない場合も、自分の人生を具体的に考える
子どもを持たないと決めた場合は、仕事、住まい、趣味、友人関係、パートナーとの暮らし、将来の経済設計など、自分が大切にしたいことに目を向けてみてください。子どもを持たないことを、親への反発や過去からの逃避だけで説明する必要はありません。
自分にとって心地よい生活を考えることは、親の価値観から離れ、自分自身の基準で人生を選ぶことにもつながります。
【毒親育ちの克服にカウンセリングは必要?相談先と選び方
過去の家庭環境が原因で、親になることを考えるだけで強い恐怖を感じる、親の言葉を何度も思い出す、自分を責め続けてしまうといった状態が続く場合は、カウンセリングなどの専門的な支援を検討できます。
カウンセリングの目的は、子どもを持ちたいと思えるように変えることではありません。過去の経験が現在の生活にどのような影響を与えているかを理解し、自分の気持ちや希望を整理し、これからの選択をしやすくすることです。
相談先を選ぶときは、次の点を確認するとよいでしょう。
- 相談したいテーマに対応しているか:親子関係、トラウマ、家族関係、自己否定など、自分の悩みを扱っているか。
- 資格や支援内容が明確か:公認心理師や臨床心理士などの資格、相談方法、料金、守秘義務について説明されているか。
- 本人の意思を尊重するか:結婚や出産を一方的に勧めたり、親との和解を強制したりせず、本人の希望を一緒に整理してくれるか。
- 無理なく続けられるか:費用や通いやすさ、オンライン相談の有無などが自分の生活に合っているか。
強い不安や抑うつ、不眠などが続き、日常生活に影響している場合は、医療機関への相談も選択肢になります。地域の保健所や精神保健福祉センターでも、心の悩みについて相談できる場合があります。
厚生労働省は、電話やSNSによる相談窓口を案内しています。何から話せばよいかわからないときも、相談先を探すことから始められます。相談を受けたからといって、必ずしも子どもを持つ方向に進む必要はありません。
一方、過去の経験について話すこと自体が苦しい場合は、無理に詳しく説明する必要もありません。自分のペースを尊重してくれる支援者を選び、話せる範囲から始めることが大切です。
【毒親育ち子供いらない】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:毒親育ちで子どもを欲しいと思えないのは、おかしいことですか?
A1:おかしいことではありません。過去の家庭環境や育児への不安、自分の生活を守りたいという希望など、理由は人によって異なります。子どもを望まないことだけで、自分を否定する必要はありません。
Q2:毒親育ちの人は、自分も毒親になりやすいのでしょうか?
A2:子ども時代の虐待や不適切な養育は、将来の心理状態や養育行動に影響する場合がありますが、必ず同じ行動を繰り返すわけではありません。自分の感情への理解、生活上のストレスへの対処、周囲からの支援なども関係します。
Q3:子どもを持たない選択をしたら、将来後悔しますか?
A3:将来の後悔を確実に予測することはできません。子どもを持つ人生にも持たない人生にも、それぞれの喜びや負担があります。他人の意見だけで決めず、自分が望む生活や大切にしたい価値観を考えることが役立ちます。
Q4:親になる自信がない場合、カウンセリングを受けたほうがよいですか?
A4:不安が強く、過去の記憶や自己否定によって日常生活に支障が出ているなら、相談する価値があります。カウンセリングは出産を決断するためだけのものではなく、自分の気持ちを整理し、今後の選択肢を考えるためにも利用できます。
Q5:毒親育ちを克服しないと、幸せな家庭は築けませんか?
A5:過去のつらい経験が完全になくならなければ幸せになれない、というわけではありません。自分の苦手なことや必要な支援を理解し、安心できる人間関係や生活環境を整えることは、子どもを持つかどうかにかかわらず役立ちます。
Q6:今は子どもがいらないと思っていますが、将来気持ちが変わってもよいですか?
A6:もちろんです。今の気持ちを尊重することと、将来の選択肢を残しておくことは両立します。反対に、将来も子どもを持たないという意思が変わらなくても問題ありません。どちらかに結論を急ぐ必要はありません。
まとめ:毒親育ちだからこそ、自分の人生を自分で選んでいい
毒親育ちで子供はいらないと感じる背景には、親から受けた傷への恐怖、自分も同じことをしてしまうのではないかという不安、育児によって自由を失いたくないという気持ちなど、さまざまな事情があります。しかし、子どもを望まない理由がすべて過去の家庭環境にあるとは限らず、必ずしも克服すべき問題とはいえません。
自分も毒親になるのではないかと怖いなら、その不安を具体的に整理し、必要に応じて専門家の支援を受ける方法があります。子どもを持たない人生を望んでいるなら、その意思を大切にしながら、自分にとって心地よい暮らしを考えていくこともできます。
大切なのは、親から受けた価値観や世間の期待だけで、人生の選択を決めないことです。子どもを持つことも、持たないことも、本人が自分の意思で選ぶべきことです。今はまだ答えが出なくてもかまいません。過去の家庭環境に人生のすべてを決められる必要はなく、焦らずに自分の気持ちと向き合っていくことが、これからの生き方を考える出発点になります。 (出典: 毒 親 育ち 子供 いらない(Yahoo!ニュース))