2026年の私立大学経営をめぐる最新データで、見過ごせない実態が明らかになった。東京商工リサーチが2026年1月27日に公表した「2025年3月期 私立大学経営法人動向調査」によると、調査対象545法人のうち、赤字だった法人は287法人。全体の52.6%に達し、赤字法人が初めて半数を超えた。
ただし、「赤字の私立大学一覧」を調べる際には注意が必要だ。公表された287法人という数字は、大学そのものだけでなく、大学を運営する学校法人全体の決算に基づいている。附属病院や系列高校などの収入・支出が含まれる場合もあり、赤字だからといって直ちに大学の閉校や経営破綻が迫っているわけではない。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 最新の赤字データ:2025年3月期は545法人中287法人が赤字で、赤字率は52.6%。
- 経営格差の実態:売上高10億円未満の49法人では赤字率69.3%。小規模法人ほど厳しい傾向が表れている。
- 本当に見るべき指標:単年度の赤字だけで判断せず、定員充足率、収支比率、運用資産余裕比率、複数年の財務推移を確認することが重要。
【2026年最新】私立大学赤字一覧の実態は?545法人中287法人が赤字
2026年10月時点で、全国の私立大学経営を比較する際の主要な最新資料の一つが、東京商工リサーチの2025年3月期調査だ。同社は企業データベースから大学・短期大学を経営する法人を抽出し、3期連続で業績が判明した545法人を分析した。
調査では、売上高の合計は6兆8,265億円と前期比1.5%増だった一方、利益に相当する「基本金組入前当年度収支差額」の合計は1,559億円で、前期比29.1%減となった。収入全体は増えたものの、利益が大きく減少する「増収減益」の状態だ。
さらに、赤字法人の割合は2022年3月期の34.2%から上昇を続け、2025年3月期には52.6%に達した。赤字法人287法人のうち、3期以上にわたって赤字が続く法人も169法人に上る。単年度の一時的な赤字だけでなく、継続的な採算悪化が課題となっていることが分かる。
なお、同調査の公表記事には、赤字となった287法人すべての名称を網羅した一覧は掲載されていない。そのため、調査で公表された赤字法人の総数を、特定の大学287校が赤字であるという意味に読み替えることはできない。大学別の状況を知るには、それぞれの学校法人が公開する財務諸表を確認する必要がある。
出典:東京商工リサーチ「2025年3月期『私立大学経営法人』動向調査」(2026年1月27日公表)。
【赤字ランキング・経営状況比較】規模別・地域別で見える格差
私立大学の赤字リスクを比較するときは、赤字法人の数だけでなく、法人の規模や所在地にも注目したい。東京商工リサーチの調査では、売上高の規模によって赤字率に大きな差が生じている。
以下は、2025年3月期の公表データを整理した比較表だ。ここでいう売上高は、学校法人の「教育活動収入計」を基礎としたものであり、大学単体の授業料収入とは異なる。
| 比較項目 | 対象・実績 | 赤字率・数値 |
|---|---|---|
| 全体 | 545法人 | 287法人が赤字、52.6% |
| 赤字の継続 | 赤字法人287法人 | 169法人で3期以上の赤字が継続 |
| 小規模法人 | 売上高10億円未満、49法人 | 34法人が赤字、69.3% |
| 大規模法人 | 売上高100億円以上、130法人 | 29法人が赤字、22.3% |
| 赤字率が最も高い地域 | 四国 | 88.9% |
| 赤字率が最も低い地域 | 関東 | 43.5% |
| 売上高トップ | 学校法人順天堂 | 2,215億6,100万円 |
| 利益トップ | 学校法人帝京大学 | 234億9,600万円 |
出典:東京商工リサーチ「2025年3月期『私立大学経営法人』動向調査」。
小規模法人の赤字率69.3%に対し、大規模法人は22.3%。その差は47ポイントに及ぶ。小規模な単科大学や短期大学では、学生数の減少による収入減を、固定的な人件費や施設維持費の削減だけで補うことが難しい。収入源が授業料や入学金に集中している法人ほど、入学者数の変動が経営に響きやすい。
地域別では四国が88.9%と最も高く、東北と北陸がともに66.7%、中部が63.1%、北海道が60.0%だった。一方、関東は43.5%。四国と関東の差は45.4ポイントとなった。
ただし、この地域別の数値は、各地域のすべての私立大学を同じ条件で比較したランキングではない。調査対象となった法人の構成や規模も影響するため、地域の数字だけで個々の大学の危険度を決めることはできない。
また、売上高ランキングと赤字ランキングは別物だ。東京商工リサーチの公表データでは、売上高トップは学校法人順天堂、利益トップは学校法人帝京大学だった。医療収入や附属病院を持つ法人が上位に入っているが、これらは大学教育だけの収益力を示す数字ではない。
【私立大学の赤字理由】少子化・定員割れ・人件費高騰が経営を圧迫
私立大学の経営悪化には、複数の要因が重なっている。大きいのは、入学者数の減少、教育・研究活動に必要な費用の上昇、そして大学間の学生獲得競争だ。
1. 18歳人口の減少と定員割れ
大学進学の対象となる18歳人口が減少すると、大学が確保できる学生の総数も伸びにくくなる。知名度や立地、教育内容、就職支援などで選ばれる大学と、学生募集に苦戦する大学の差が広がりやすい。
東京商工リサーチの2026年1月の調査記事では、日本私立学校振興・共済事業団が公表した2024年度のデータとして、入学定員充足率が100%未満の私立大学は59.2%と紹介された。一方、私学事業団の経営改善関連資料では、2025年度に入学定員を満たさなかった大学は53.2%とされている。対象年度や集計条件が異なるため、両者をそのまま連続した同一統計として比較することはできないが、定員割れが私学経営の大きな課題であることは共通している。
2. 人件費・物価・施設維持費の上昇
大学には、教員・職員の給与、研究設備、実験機器、図書館、情報システム、校舎の維持管理など、教育の質を保つために必要な支出がある。物価や人件費が上がっても、授業料を短期間で大幅に引き上げることは容易ではない。
特に学生数が減っている大学では、授業料収入が減少する一方で、教職員や施設の維持費は学生数に比例して下がるとは限らない。こうした収入と支出のずれが、収支悪化につながる。
3. 小規模大学ほど収入源の分散が難しい
大規模な学校法人は、複数の大学・学部、附属学校、病院、研究事業などを運営している場合がある。事業が複数あれば、ある部門の不振を別の部門の収入で補える可能性がある。
一方、単科大学や小規模法人は、学生納付金への依存度が高くなりやすい。募集人数を増やすにも施設や教員の配置に制約があり、短期間で事業規模を変えることも難しい。
4. 大規模な設備投資や教育改革の負担
校舎の建て替え、耐震改修、研究設備の更新、デジタル化などは、長期的には教育環境を改善するための投資だが、実施年度には支出が膨らむことがある。単年度の赤字が、必ずしも教育活動の不振だけで発生しているわけではない点にも注意したい。
重要なのは、支出増が将来の収入や教育の質につながる投資なのか、それとも慢性的な赤字を生む構造的な問題なのかを区別することだ。
【学校法人の財務諸表】大学単体と法人全体の赤字はどう違う?
「赤字の私立大学」を調べるうえで、最も誤解が生じやすいのが会計上の集計単位だ。大学名と学校法人名は一致する場合もあるが、経営の実態を示す決算は、大学だけでなく法人全体を対象としていることがある。
東京商工リサーチの調査で用いられた売上高は、事業活動収支計算書の「教育活動収入計」、利益は「基本金組入前当年度収支差額」だ。法人単位で集計するため、附属高校などの系列校や医療事業、付随事業の収入も含まれる。
例えば、大学部門の収支が赤字でも、附属病院や系列校などの収入によって法人全体では黒字となる場合がある。反対に、大学部門の教育活動が比較的安定していても、法人内の別事業や大規模投資などの影響で全体の収支が悪化する可能性もある。
したがって、学校法人全体の赤字データを見ただけで「その大学の教育活動が赤字」「閉校が近い」と判断するのは適切ではない。大学部門の収支と法人全体の収支を分けて確認する必要がある。
確認したい財務諸表は主に3種類ある。
「事業活動収支計算書」は、教育活動などを通じてどれだけ収入があり、支出を差し引いてどのような収支になったかを確認する資料だ。「資金収支計算書」は、資金の収入・支出や資金繰りを把握するために役立つ。「貸借対照表」は、保有する資産と負債、純資産の構成を確認する資料で、短期的な支払能力や長期的な財務余力を考える際に重要となる。
これらを組み合わせれば、単年度の収支だけでは分からない経営の姿が見えてくる。学校法人の公式サイトで公開されている決算資料に加え、日本私立学校振興・共済事業団が編集する「今日の私学財政」も、大学法人や大学部門の財務状況を比較する際の参考資料となる。2025年12月発行の令和7年度版は、2020~2024年度の財務集計・分析を収録している。
【経常収支差額比率・運用資産余裕比率】経営危機を見分ける4つの指標
大学の経営状況を比較するときは、赤字か黒字かという二択ではなく、収益性・資金繰り・資産の蓄積・学生確保の4つの観点から確認したい。
1. 経常収支差額比率・事業活動収支差額比率
経常収支差額比率は、経常的な収入に対して、経常的な支出を差し引いた収支がどの程度あるかを見る指標だ。一般に、比率がプラスであれば経常的な活動で収支を確保できており、マイナスであれば通常の運営で支出が収入を上回っていることを示す。
ただし、財務資料によっては「経常収支差額比率」と「事業活動収支差額比率」が使い分けられる。事業活動収支差額比率は、基本金組入前当年度収支差額を事業活動収入で割って算出する指標だ。名称や計算式が異なる数値を、同じ指標として比較しないようにしたい。
日本私立学校振興・共済事業団の経営改善関連資料によると、2024年度に事業活動収支差額比率がマイナスだった大学法人は51.7%だった。これは東京商工リサーチの287法人という数字とは、対象年度や赤字判定に用いる指標が異なる。数字の違いは、直ちに矛盾を意味するものではない。
2. 運用資産余裕比率
運用資産余裕比率は、現金預金・特定資産・有価証券などの運用資産から外部負債を差し引き、経常支出に対してどれだけの余裕があるかを見る指標だ。一般的な算式は「(運用資産-外部負債)÷経常支出」で、単位は年となる。
比率が高いほど、経常的な支出に備える資産の余裕が大きいと評価される。1.0を上回れば、計算上、外部負債を差し引いた運用資産が年間の経常支出を上回ることになる。ただし、資産の使途や換金可能性、今後の施設更新費用なども確認する必要があり、この指標だけで安全性が保証されるわけではない。
3. 入学定員充足率
入学定員充足率は、入学者数を入学定員で割って算出する。100%未満の場合は、入学定員に対して入学者が不足している状態だ。ただし、入学定員充足率は入学時点の指標であり、在籍学生数や退学率、留年率までを直接示すものではない。
入学定員充足率が低い状態が続いていれば、将来の学納金収入に影響する可能性がある。入学者数だけでなく、在籍者数の推移や学部別の募集状況も合わせて見たい。
4. 複数年の赤字継続と資金繰り
1年だけ赤字なのか、3年以上赤字が続いているのかでは、受け止め方が異なる。東京商工リサーチの調査では、赤字287法人のうち169法人で3期以上の赤字が続いていた。赤字の継続に加え、運用資産の減少、負債の増加、入学者の減少が同時に進んでいる場合は、より慎重な確認が必要だ。
財務指標は単独ではなく、少なくとも3~5年程度の推移を追い、同規模の大学法人や同じ種類の大学と比較すると、より実態をつかみやすい。
【私立大学の経営危機を見分ける】受験生・保護者が確認したいチェックポイント
大学を選ぶ受験生や保護者にとって、学校法人の財務情報は重要な判断材料の一つだ。ただし、赤字の有無だけを理由に志望校を外すのではなく、教育の継続性と経営改善の見通しを確認することが大切になる。
注意して確認したいサインは次のとおりだ。
・複数年にわたり収支差額比率がマイナスで、改善の兆しが見られない。
・入学定員の未充足が続き、在籍学生数も減少している。
・運用資産余裕比率が低下し、負債や資金繰りへの負担が増している。
・学校法人が経営改善計画を公表している場合、その計画の目標や進捗が不明瞭である。
・学部の募集停止、定員削減、キャンパス再編など、教育提供体制に影響する変更が公表されている。
これらは経営状況を詳しく確認するためのサインであり、単独で経営破綻を意味するものではない。特に募集停止や学部再編は、経営改善のために計画的に実施される場合もあるため、公式発表と財務資料を合わせて判断したい。
一方、赤字でも、十分な運用資産を保有している法人や、将来の収入改善につながる投資を進めている法人では、直ちに教育継続が危ぶまれるとは限らない。財務の余力と、大学としての教育・研究活動を継続できる体制の両方を確認する必要がある。
大学の公式サイトでは、決算情報、事業報告書、監査報告書、経営改善計画、中期計画などを確認できる場合がある。受験先の比較では、最新年度の数字だけでなく、過去の推移と今後の計画を併せて確認したい。
【プロの結論】私立大学赤字ランキングより重要な「経営の持続性」
2026年の私立大学経営を考えるうえで、東京商工リサーチの調査が示した最も大きな変化は、赤字法人が545法人中287法人、52.6%に達したことだ。利益合計も前期比29.1%減となり、少子化やコスト上昇が経営に与える影響が鮮明になった。
ただし、赤字法人の数をそのまま「経営危機にある大学の数」と解釈することはできない。学校法人全体の決算と大学部門の収支は異なる場合があり、赤字の理由も、学生募集の不振から一時的な設備投資までさまざまだ。
私立大学の経営状況を比較する際に優先したいのは、次の3点だ。
第一に、収支が改善する見通しがあるか。 赤字の継続年数や収支差額比率、学生数の推移から、収益構造が持続可能かを確認する。
第二に、赤字を吸収できる財務余力があるか。 運用資産余裕比率や負債の状況を見て、将来の施設更新や教育活動に必要な資金を確保できるかを考える。
第三に、教育の質と学生募集を両立できているか。 定員充足率だけでなく、教育・研究の特色、就職支援、学生への支援体制、経営改善策の進捗も確認する。
赤字ランキングは、経営上のリスクを知る入口としては有用だ。しかし、大学の将来を判断するには不十分である。財務諸表を複数年で比較し、学校法人の資産・負債と大学部門の教育活動を分けて見ることが、実態に近づくための最も確かな方法となる。
【私立大学赤字一覧】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年最新の私立大学赤字一覧はどこで確認できますか?
A1:東京商工リサーチが2026年1月27日に公表した「2025年3月期 私立大学経営法人動向調査」で、545法人中287法人が赤字だったことを確認できます。ただし、公表記事に赤字287法人の全名称を網羅した一覧は掲載されていません。個別の学校法人については、公式サイトの財務諸表や事業報告書を確認してください。
Q2:私立大学の赤字率52.6%は、大学の半数以上が倒産するという意味ですか?
A2:いいえ。52.6%は、調査対象となった学校法人545法人のうち287法人が赤字だった割合です。赤字は倒産や閉校と同義ではありません。保有資産、負債、赤字の継続期間、学生募集の状況などによって、経営上のリスクは異なります。
Q3:定員割れしている私立大学は危険ですか?
A3:定員割れは、将来の学納金収入が減少する可能性を示す重要な指標です。ただし、1年だけ定員を満たさなかった大学と、長期間にわたり入学者・在籍者が減り続けている大学では状況が異なります。複数年の入学者数、収支比率、運用資産余裕比率などを合わせて確認することが大切です。
Q4:赤字の私立大学を見分けるには、どの財務指標を見ればよいですか?
A4:事業活動収支差額比率や経常収支差額比率で収益性を確認し、運用資産余裕比率で資産の余力を確認する方法が有効です。さらに、入学定員充足率、負債の状況、複数年の赤字継続の有無を組み合わせることで、単年度の赤字だけでは分からない経営状況を把握しやすくなります。
Q5:学校法人全体が赤字でも、大学自体は安定している場合がありますか?
A5:あります。学校法人全体の決算には、附属高校、附属病院、その他の関連事業などが含まれる場合があります。大学部門が比較的安定していても、別事業や投資の影響で法人全体が赤字になる可能性があります。法人全体の決算と大学部門の収支を分けて確認してください。
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
2026年最新の公表データでは、私立大学を運営する545法人のうち287法人が赤字となり、赤字率は52.6%に達した。小規模法人や地方の法人ほど厳しい傾向が見られる一方、法人の規模や事業構成によって経営状況には大きな差がある。
今後、大学を取り巻く環境を判断するうえでは、少子化による学生確保の難しさに加え、人件費・物価の上昇、施設更新の負担、教育内容の差別化が重要な論点となる。
「赤字だから危険」「黒字だから安全」と決めつけるのではなく、学校法人の財務諸表、収支差額比率、運用資産余裕比率、定員充足率、そして経営改善計画を総合的に確認したい。数字の表面だけでは見えない経営の持続性を読み解くことが、受験生・保護者にとっても、私立大学の将来を考えるうえでも重要な判断基準となる。 (出典: 私立 大学 赤字 一覧(Yahoo!ニュース))