長野県のいじめ問題をめぐり、2026年は県立高校の生徒総会で起きた事案が大きな注目を集めています。長野県教育委員会は、2025年11月に複数の生徒から特定の生徒へ質問が集中し、その後も欠席が続いた事案について、2026年7月に「いじめ防止対策推進法」に基づく重大事態と判断し、第三者調査委員会による調査を進める方針を示しました。
一方、長野県教育委員会が公表した2024年度の統計では、県内の小・中・高校、特別支援学校におけるいじめ認知件数は9,633件でした。前年度より434件減少したものの、中学校や特別支援学校では増加しています。件数の変化をどう読むべきか、重大事態の調査は何を明らかにするのか、相談先はどこなのか。2026年10月24日時点で公表されている資料と報道を基に、現状と課題を整理します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 統計の要点:2024年度の長野県いじめ認知件数は9,633件。前年度比では減少しましたが、学校種別では増減が分かれています。
- 2026年の重大事態:県立高校の生徒総会で質問が集中した事案について、県教委は第三者調査による事実関係の検証を進めています。
- 相談と再発防止:県の24時間相談窓口、LINE相談、長野地方法務局のSOSミニレターなど、学校以外にも相談できる手段があります。
【2026年最新】長野県のいじめ認知件数9,633件が示す実態
長野県教育委員会が2025年10月29日に公表した「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2024年度のいじめ認知件数は9,633件でした。対象は県内の国公私立の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校など711校です。
2026年10月24日時点で、県教育委員会の統計公表ページに掲載されている最新の年度別資料は2024年度分です。したがって、2026年の事案に関する最新報道と、統計上の最新年度は区別して見る必要があります。
2024年度の長野県いじめ統計を前年度と比較すると、認知件数の総数は減少した一方、学校種別では異なる傾向が表れています。
| 項目 | 2023年度 | 2024年度 | 変化・見方 |
|---|---|---|---|
| いじめ認知件数の合計 | 10,067件 | 9,633件 | 434件減 |
| 小学校 | 8,251件 | 7,715件 | 536件減 |
| 中学校 | 1,554件 | 1,621件 | 67件増 |
| 高等学校 | 184件 | 167件 | 17件減 |
| 特別支援学校 | 78件 | 130件 | 52件増 |
| 児童生徒1,000人当たりの認知件数 | 47.0件 | 45.5件 | 1.5件減 |
| 小・中学校の不登校児童生徒数 | 7,060人 | 7,248人 | 188人増 |
出典:長野県教育委員会「令和6年度 いじめの状況について」「令和6年度 不登校の状況について」。不登校児童生徒数は、いじめ認知件数とは別の統計です。
注目すべきなのは、総数の減少だけで状況を判断できないことです。中学校では認知件数が増加しており、特別支援学校でも増加が確認されました。学校種別ごとに、いじめの発生状況や発見・対応の体制を検討する必要があります。
また、1,000人当たりの認知件数は長野県が45.5件、全国が61.3件でした。ただし、県の数値が全国平均を下回っているからといって、個々の学校で問題が少ないと断定することはできません。いじめの把握には、学校の調査方法や児童生徒が相談できる環境なども関係するためです。
県教育委員会は、認知件数の増減について、いじめ防止対策推進法の定義に基づいて小さな事象も積極的に認知する姿勢や、コロナ禍以前に近い学校活動が戻って接触機会が増えたことなどを背景として挙げています。
つまり、認知件数は単純な「いじめの多さランキング」ではありません。被害を早期に把握できているかを考えるための指標でもあります。
【重大事態の経緯】長野県立高校の生徒総会いじめ事案で何が起きたのか
2026年に注目された県立高校の事案では、生徒総会という学校の公式な活動の場で、特定の生徒に質問が集中したことが問題になりました。県教育委員会の公表資料と報道から、これまでの経緯を整理します。
2025年11月:生徒総会で質問が集中
事案が起きたのは2025年11月です。県教育委員会が2026年7月2日に公表した資料によると、県立高校の生徒総会で、特定の生徒に対して議題と関係のない質問も含め、多くの質問が集中しました。
その結果、生徒は心理的苦痛を受け、その後も欠席が続く状況になりました。報道では、当時1年生だった学友会長に対して上級生らが質問を重ねた事案として伝えられています。
2025年12月〜2026年1月:学校が調査を実施
県教委の公表資料によると、学校は2025年12月に校内いじめ対策委員会を立ち上げ、全校生徒や生徒会役員を対象とするアンケート、関係生徒への聞き取りなどを実施しました。学校はこの事案をいじめと認知し、2026年1月には保護者に調査結果などを報告しています。
県教育委員会も、学校から相談を受けた段階で校内組織の立ち上げや、保護者と連携した学習保障、心理的ケアについて助言したと説明しています。12月にはスクールカウンセラーによるカウンセリングも行われました。
2026年5月〜6月:保護者の申し立てと県教委の検証
2026年5月、保護者から県教育委員会に対し、いじめ重大事態として調査するよう申し立てがありました。県教委は6月に保護者と面談し、重大事態の調査に向けて県教委が調べた内容を説明したと公表しています。
また、6月19日付の県教委の報告書について報じた朝日新聞などによると、県教委は質問を重ねた当時の上級生ら4人をいじめた側と判断しました。直接質問していなくても、笑ったり、はやし立てたりした生徒についても「いじめの観衆」と位置づけたとされています。
この報告をめぐっては、総会で何が起きたのかだけでなく、教職員がその場でどう対応したのか、事後の指導や記録の扱いは適切だったのかも検証の対象になっています。
2026年7月:県教委が重大事態と判断
県教育委員会は2026年7月2日、この事案をいじめ防止対策推進法に基づく重大事態と判断したと発表しました。弁護士、大学教授、臨床心理士などによる第三者調査委員会を設置し、事実関係を調べる方針を示しています。
県が8月27日付で公表した県民ホットラインへの回答では、第三者調査委員会が生徒総会での学校の対応を含めて事実関係を調査中と説明しました。9月には地元報道でも調査開始が伝えられています。2026年10月24日時点では、県の公開資料で最終報告書や提言の公表は確認できません。
この事案では、いじめと認知した後の支援に加え、重大事態として調査するまでの対応、学校と県教委の連携、再発防止策がどのように具体化されるかが今後の焦点です。
【法律のポイント】いじめ防止対策推進法の「重大事態」とは
「重大事態」は、単に社会的な注目を集めた事案を指す言葉ではありません。いじめ防止対策推進法第28条は、重大な被害が生じた疑いがある場合や、いじめによって相当の期間、学校を欠席せざるを得ない疑いがある場合に、学校の設置者または学校が調査組織を設けて事実関係を調べることを定めています。
法律上、重大事態には主に次の2つの類型があります。
第1号:いじめにより、児童生徒の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがある場合。
第2号:いじめにより、児童生徒が相当の期間、学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合。
ここで大切なのは、重大事態の判断が、調査を始めるための重要な手続きでもあることです。認定した時点で、あらゆる事実関係や関係者の責任が最終確定するという意味ではありません。調査を通じて、行為の内容、被害の状況、学校側の対応、再発防止に必要な事項を明らかにしていきます。
長野県教育委員会の2024年度統計では、県内のいじめ重大事態は11件でした。内訳は第1号が6件、第2号が7件です。同じ事案が両方の類型に該当する場合はそれぞれに計上されるため、内訳を足した数と実際の事案件数は一致しません。
重大事態の調査では、被害を訴える児童生徒や保護者への情報提供も法律で求められています。調査を実施すること自体をゴールにせず、本人の学習機会をどう確保するか、安心して過ごせる環境をどう整えるかまで考える必要があります。
【見落としやすい実態】小中学校のいじめ、SNS、そして不登校との関係
小学校では件数が多く、中学校では増加
長野県の小学校・中学校のいじめ実態を見ると、2024年度は小学校が7,715件、中学校が1,621件でした。件数の規模は小学校の方が大きい一方、前年度との比較では小学校が減少し、中学校は増加しています。
学校段階が違えば、友人関係や集団活動、教職員が状況を把握する方法も異なります。小学校では日常の行動や人間関係の変化を丁寧に把握すること、中学校では学級や部活動など複数の人間関係を視野に入れた対応が欠かせません。
SNSいじめは「231件」だけでは実態を測れない
県教育委員会の2024年度資料では、パソコンや携帯電話などを使った誹謗中傷や嫌なことをされた事案は231件でした。内訳は小学校83件、中学校120件、高等学校21件、特別支援学校7件です。
この231件は、調査上の「パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷や嫌なことをされる」という区分に該当した認知件数です。SNSだけを切り出した件数でも、ネット上で起きた被害のすべてを数えた数字でもありません。
ネット上のいじめは、学校外の時間に起きたり、複数のグループに情報が広がったりするため、教職員や保護者が気づくまでに時間がかかることがあります。被害を示すメッセージや投稿が残っている場合は、無理のない範囲で日時や画面を保存し、学校や相談窓口に伝えることが役立ちます。ただし、拡散や報復につながる形で投稿を転載することは避けてください。
不登校といじめは関係するが、同じものではない
2024年度の長野県では、小・中学校の不登校児童生徒数が7,248人となり、前年度より188人増加しました。一方、高等学校の不登校生徒数は743人で、前年度より102人減少しています。
不登校の背景には、いじめのほか、友人関係、学業、学校生活への不適応、心身の不調、家庭環境など、さまざまな要因があります。県全体の不登校人数だけから、何人がいじめを原因として学校に行けなくなったのかを判断することはできません。
ただし、いじめを受けた児童生徒が欠席を続ける場合は、いじめの認知や調査と並行して、学習の継続や心理的ケアを確保することが重要です。学校に戻ることだけを唯一の目標にせず、本人の気持ちや状態に応じた支援を考える必要があります。
【県教委のいじめ対策】第三者調査と再発防止はどう進むのか
長野県教育委員会は、いじめの未然防止、早期発見、早期対応に向けて、学校内の対策組織や相談体制の充実を進めています。2026年には、長野県いじめ対応マニュアル「いじめの重篤化を防ぐために」の改訂版も公開されました。
改訂版では、重大事態に至るのを防ぐため、初動対応の迅速化、いじめの疑いがある段階での判断、関係者間の情報共有、被害を受けた側と行為をした側双方への心理的ケア、関係機関との連携などが重視されています。
こうした方針を実効性のあるものにするには、学校が日常的に相談を受け付けるだけでなく、被害の訴えがあったときに組織として記録を残し、対応方針を共有し、必要な支援につなげることが欠かせません。
2026年の県立高校事案で、第三者調査委員会が検証するのも、総会当日の状況だけではありません。学校がその場でどのように対応したか、事後の調査や指導が適切だったか、被害を訴える生徒への支援が十分だったかといった点も重要です。
調査委員会の提言は、当該校だけでなく県内の学校にも共有し、同様の事案を防ぐための対策に生かすことが期待されます。個々の学校の対応を改善するとともに、教職員がいじめを判断する基準や、周囲の生徒への指導方法を共有する必要があります。
また、長野県いじめ問題対策連絡協議会は、地域、家庭、教育関係者、関係機関などが連携していじめ問題を検討する場です。2025年12月11日の会議では、2024年度のいじめの状況などが報告されました。統計の分析と個別事案の検証をつなげ、学校現場で実行できる改善策に落とし込めるかが問われています。
【長野県のいじめ相談窓口】本人・保護者が利用できる支援先
いじめを受けている本人だけでなく、子どもの様子に異変を感じた保護者や、周囲でいじめを見聞きした人も相談できます。学校に話しづらい場合は、学校外の窓口を利用する方法があります。
1.学校生活相談センター(24時間子どもSOSダイヤル)
電話:0120-0-78310
長野県教育委員会が設置する相談窓口です。いじめや不登校をはじめ、学校生活に関する悩みについて、子どもや保護者などから相談を受け付けています。受付は年中無休・24時間で、匿名での相談も可能です。メール相談は「gakko-sodan@pref.nagano.lg.jp」で受け付けています。
2.LINE相談「ひとりで悩まないで@長野」
長野県内の学校に在籍する中学生・高校生などを対象に、学校や友人関係についてLINEで相談できる窓口です。
2026年度の開設期間:2026年4月1日〜2027年3月31日
通常の受付:毎週水曜日・日曜日の17時〜21時(相談終了21時30分)
利用対象:長野県内の対象校に在籍する中学生・高校生など
休止日や、大学生などが対応する「ピア・デイ」の時間帯には例外があります。利用前に長野県教育委員会の最新案内を確認してください。
3.長野地方法務局の「こどもの人権110番」
電話:0120-007-110
学校でのいじめや虐待など、子どもの人権に関する相談を受け付けています。受付時間は平日8時30分〜17時15分です。相談は無料で、秘密は守られます。本人だけでなく、子どもに関する悩みを持つ大人も利用できます。
4.長野地方法務局の「こどもの人権SOSミニレター」
電話で気持ちを話すのが難しい子どもには、手紙で相談する方法もあります。SOSミニレターは、小・中学生などに配布される相談用の手紙で、悩みを書いてポストに投函すると、法務局側から返事を受け取ることができます。切手は不要です。
長野地方法務局は、2025年12月のいじめ問題対策連絡協議会でもSOSミニレターの取り組みを紹介し、県内でその年度に約230件の相談が寄せられたと報告されています。周囲に相談相手がいないと感じる子どもにとって、学校の先生や家族以外に助けを求めるための選択肢です。
どの窓口を利用する場合も、最初から事情をすべて説明する必要はありません。「学校に行くのがつらい」「友人との関係で困っている」「ネット上で嫌なことをされた」など、話せる範囲から伝えて構いません。緊急の危険がある場合は、相談を先延ばしにせず、周囲の信頼できる大人や警察などにも助けを求めてください。
【長野県いじめ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:長野県のいじめ認知件数は2024年度に減少したのですか?
A1:はい。長野県教育委員会の公表資料では、2024年度は9,633件で、前年度の10,067件から434件減少しました。ただし、中学校と特別支援学校では増加しており、総数の減少だけで問題が解消したとは判断できません。
Q2:2026年の県立高校の事案は、なぜ重大事態と判断されたのですか?
A2:2025年11月の生徒総会で特定の生徒に質問が集中し、心理的苦痛を受けた生徒の欠席が続いたためです。県教育委員会は2026年7月2日、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態と判断し、第三者調査委員会による調査を進める方針を公表しました。
Q3:学校に相談できない場合、どこに連絡すればよいですか?
A3:長野県の学校生活相談センター(0120-0-78310)は24時間相談を受け付けています。中学生・高校生などはLINE相談「ひとりで悩まないで@長野」、電話での相談が難しい場合は長野地方法務局のSOSミニレターも利用できます。
まとめ:長野県のいじめ問題で注視すべき点と今後の課題
長野県の2024年度のいじめ認知件数は9,633件で、前年度より減少しました。しかし、中学校や特別支援学校では件数が増加し、小・中学校の不登校児童生徒数も7,248人に達しています。統計を読む際は、全体の増減だけでなく、学校種別や被害の内容、発見・対応の仕組みにも目を向ける必要があります。
2026年の県立高校の生徒総会事案では、いじめの認知に加え、重大事態としての調査、学校側の対応の検証、被害を訴えた生徒への継続的な支援が課題となっています。第三者調査委員会の検証結果と、その提言を学校現場の再発防止策にどう反映するかが重要です。
いじめの認知件数は、被害のすべてを表す数字ではありません。数字が減ったときも、相談や早期発見の仕組みが機能しているかを確かめる必要があります。そして、いじめを疑う状況があれば、重大な被害に至るまで対応を待つのではなく、本人の安全と学習機会を守りながら事実関係を調べることが欠かせません。
学校、教育委員会、家庭、地域、相談機関がそれぞれの役割を果たし、子どもが安心して助けを求められる環境を整えられるか。長野県のいじめ対策は、個別事案の調査結果を具体的な行動に変えられるかどうかが問われています。 (出典: 長野 県 いじめ(Yahoo!ニュース))