「その日暮らし」とは、稼いだお金をその日の生活費に充て、将来に備えるだけの余裕が少ない暮らしを指す言葉です。一方で、先の予定に縛られず、目の前の時間を大切にする生き方を表す場合もあります。同じ言葉でも、経済的な苦しさを伝えるのか、自由なライフスタイルを表現するのかによって、受け取られ方は大きく変わります。
辞書の定義を確認すると、「その日暮らし」には経済的な意味と、将来の目標や見通しを持たずに日々を過ごすという意味があります。この記事では、Weblio辞書や『精選版 日本国語大辞典』などの辞書情報を踏まえ、意味・語源・使い方・例文・類語・言い換え・対義語を整理します。さらに、2026年時点で公表されている貧困関連の統計も参照しながら、言葉の意味と現実の生活困窮を区別して解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 意味:その日の収入で生活を支える余裕のない暮らし、または先々の見通しを立てずに日々を送る生き方。
- 使い方:経済的な困窮を表す場合は否定的な意味が強く、自由な生き方を表す場合は文脈によって肯定的にも使われる。
- 類語・対義語:「その日稼ぎ」「日銭暮らし」「行き当たりばったり」などが類似表現。「計画的な生活」「安定した暮らし」などは対照的な表現。
【意味を解説】その日暮らしとは?辞書が示す2つの意味
「その日暮らし」は「そのひぐらし」と読みます。「その日暮し」と送り仮名を省いて表記することもあり、「其日暮」「其の日暮らし」といった表記も見られます。
『精選版 日本国語大辞典』の語義を掲載するコトバンクでは、主に次の2つの意味が示されています。
- 経済的な意味:その日の収入で、その日をようやく暮らすこと。生活にゆとりがなく、先々に備える余裕もない状態。
- 生き方に関する意味:将来の目的や望みを特に持たず、その日一日を過ごすこと。また、そのような生活。
1つ目は、お金や生活基盤に余裕がない状態を指します。たとえば、日払いの仕事で得た収入を食費や家賃に充てるため、貯金をする余地がない場合です。
2つ目は、経済状況に限らず、将来の計画を立てずに日々を送る様子を表します。十分な資産があっても、目標を定めず、成り行きに任せて生活している人について使われることがあります。
Weblio辞書に掲載されている用例にも、生活の苦しさを表すものと、自由気ままな暮らしを連想させるものがあります。Meaning-Bookの解説記事も、この言葉を経済的な意味と生き方に関する意味に分けています。
つまり、「その日暮らし」という言葉を理解する際は、単にお金がないことだけでなく、生活費をまかなえるか、将来への備えがあるか、計画を立てずに過ごしているかという3つの観点を区別することが大切です。
【語源と歴史】その日暮らしはいつから使われている?
「その日暮らし」は、「その日」と「暮らし」を組み合わせた言葉です。「暮らし」は生活を営むことや、日々を過ごすことを意味します。そこに「その日」が加わることで、今日という一日の生活に焦点が当たる表現になっています。
語源を理解するうえで参考になるのが、『精選版 日本国語大辞典』に収録された用例です。コトバンクの同辞典項目では、1676年の俳諧『天満千句』に「其日くらし」という用例が紹介されています。また、島崎藤村の小説『破戒』(1906年)にも、明日の見通しが立たない人々の生活を表す文脈で「其日暮し」が登場します。
こうした用例からは、単に一日を過ごすという意味だけでなく、生活の不安定さや将来の見通しのなさを表す言葉として使われてきたことがうかがえます。
なお、「その日暮らし」の語源を、特定の人物や一つの歴史的事件だけに結び付けることはできません。言葉の成り立ちは比較的わかりやすい一方、具体的な意味やニュアンスは、時代や文章の文脈によって広がってきました。
2026年の現在では、経済的に余裕のない状態を指す従来の意味に加え、将来にとらわれず今を楽しむ生活を表す用法も見られます。Influencer Marketing Guideの解説記事でも、否定的な意味と、自由な生き方を表す肯定的な意味の両方が紹介されています。ただし、肯定的な用法があるからといって、経済的な不安定さという本来の意味がなくなったわけではありません。
【使い方と例文】その日暮らしはどんな場面で使う?
「その日暮らし」は、主に「その日暮らしをする」「その日暮らしの生活」「その日暮らしが続く」といった形で使います。経済状況について述べるのか、生活態度や価値観について述べるのかによって、言葉の印象が変わります。
例文1:経済的な余裕がない場合
「日払いの仕事で得た収入を食費と家賃に充てる毎日で、貯金もできず、その日暮らしが続いている。」
この例文では、収入が日々の生活費に消え、将来のためにお金を残せない状態を表しています。経済的な困窮や生活の不安定さを伝える用法です。
例文2:収入が不安定な場合
「仕事の依頼があるときだけ働いているため、収入が安定せず、その日暮らしになりがちだ。」
この場合は、仕事量や収入の変動が生活の不安定さにつながっています。日雇い労働に限らず、単発の仕事や案件ごとに報酬を得る働き方についても使えます。
例文3:将来の計画がない場合
「目標を決めないまま毎日を過ごし、その日暮らしの生活から抜け出せずにいる。」
ここでは、お金の問題よりも、将来の見通しや人生の目標が定まっていない状態に重点が置かれています。ただし、計画を立てていないという理由だけで、その人の生活が経済的に苦しいとは限りません。
例文4:自由なライフスタイルを表す場合
「細かな予定を決めず、旅先で出会った人や景色を楽しむ、その日暮らしの旅を続けている。」
この例文では、自由気ままに過ごす様子を表現しています。ただし、「その日暮らし」には先行きの不安という含みもあるため、純粋に前向きな意味を伝えたい場合は「気ままな旅」「自由な暮らし」と言い換えると誤解が少なくなります。
例文5:第三者の生活を説明する場合
「彼はその日暮らしをしているが、本人は将来の不安よりも、今の時間を大切にしたいと考えている。」
このように、言葉が表す生活の状態と、本人がその生活をどう評価しているかを分けて書くこともできます。
使い方で気を付けたいのは、相手の生活を安易に「その日暮らし」と決め付けないことです。収入が少ない事情や貯蓄が難しい背景は人によって異なります。客観的に説明したい場合は、「収入が不安定な生活」「貯蓄に回す余裕がない状態」など、具体的な状況を表す言い方が適しています。
【類語・言い換え・対義語】似た言葉との違いを比較
「その日暮らし」の類語には、経済的な困窮を表す言葉と、計画性のない生き方を表す言葉があります。意味が完全に一致するとは限らないため、伝えたい内容に合わせて選ぶことが重要です。
主な類語・言い換え表現
- その日稼ぎ:その日に得た収入を頼りに生活すること。経済面に重点があり、将来の目標がないという意味は必ずしも含みません。
- 日銭暮らし:日々の収入で生活を維持すること。収入を継続的に確保できるかどうかが問題になる文脈で使われます。
- 一日暮らし:その日の収入で、その日の生活を支えること。先の見通しが立ちにくい状態を表す類似表現です。
- 食うや食わず:食べることさえ十分にできないほど、生活が苦しい状態。「その日暮らし」よりも困窮の深刻さが強く伝わります。
- 生活苦:収入や支出などの事情によって、生活を営むことが苦しい状態。経済的な問題を明確に伝えたいときに適しています。
- 行き当たりばったり:先の計画を立てず、その場の成り行きに任せること。金銭的な困窮よりも、計画性のなさを表します。
- その場しのぎ:将来の解決よりも、目の前の問題への一時的な対処を優先すること。生活全体より、個々の行動や対応に使われる表現です。
「日雇い」は、日単位で雇用される働き方を指す言葉であり、「その日暮らし」と同義ではありません。日雇いで働いていても貯蓄が十分にある人はいますし、正社員として働いていても、収入に対して支出が多ければ生活費に余裕がないことはあります。
対義語に近い表現
「その日暮らし」には、あらゆる文脈で使える単一の対義語があるわけではありません。経済的な意味を反対側から表すなら「安定した暮らし」「ゆとりのある生活」「計画的な家計管理」などが適しています。将来の見通しがないという意味に対しては、「長期的な計画を持つ」「将来設計を立てる」「計画的に生活する」といった表現が使えます。
「正規雇用」も、安定した収入につながる場合があるものの、言葉そのものは雇用形態を示します。「その日暮らし」の対義語として直接置くよりも、「安定した収入のある生活」とするほうが意味が正確です。
また、「宵越しの銭は持たない」は、その日の稼ぎを翌日に持ち越さないという意味で関連しますが、生活困窮を表す場合と、金銭に執着しない気質を表す場合とではニュアンスが異なります。文脈を確認せずに、完全な同義語として使うのは避けたいところです。
【その日暮らしの実態と貧困】生活の苦しさは統計からどう見える?
「その日暮らし」という言葉からは、日払いの仕事で生計を立てる人や、貯金ができない人の姿が連想されます。しかし、実際の生活困窮は、収入だけでなく、住居費、食費、医療費、家族の状況、雇用の安定性など、複数の要因が重なって生じます。
日本の生活状況を把握するうえで参考になるのが、厚生労働省の「国民生活基礎調査」です。同調査では、所得や貯蓄、世帯の生活意識、貧困率などが調べられています。
労働政策研究・研修機構が整理した厚生労働省の「2025(令和7)年国民生活基礎調査」の公表結果によると、相対的貧困率は15.0%、子どもの貧困率は11.0%でした。また、生活意識について「苦しい」と回答した世帯は55.4%でした。
これらの数値は、生活に経済的な課題を抱える人や世帯の状況を考えるうえで重要な資料です。ただし、相対的貧困率や生活意識の数値は、「その日暮らしをしている人の割合」を示したものではありません。それぞれ測定対象や定義が異なるため、混同しないことが必要です。
| 指標 | 公表結果 | 読み取れることと注意点 |
|---|---|---|
| 相対的貧困率 | 15.0% | 所得分布に照らして、相対的に低い所得の状態にある人の割合を示す指標。「その日暮らし」の経験者数とは異なる。 |
| 子どもの貧困率 | 11.0% | 子どもの経済的な生活環境を考えるための指標。家庭の所得状況などを踏まえて解釈する必要がある。 |
| 生活意識が「苦しい」と回答した世帯 | 55.4% | 世帯が感じる生活の苦しさを示す割合。所得による貧困率とは異なり、生活意識に関する指標である。 |
相対的貧困率は、一般に、等価可処分所得が中央値の半分に満たない人の割合を指します。これは社会全体の所得分布に対する相対的な位置を示すもので、個々の人が毎日どのようにお金を使っているかを直接測るものではありません。
また、収入が一定額あっても、家賃や医療費などの固定的な支出が大きければ、手元に残るお金は少なくなります。反対に、収入が不安定でも、貯蓄や家族からの支援などによって当面の生活を維持できる場合があります。
そのため、「その日暮らしの実態」を考える際は、年収だけでなく、収入の変動、生活費、貯蓄、突発的な支出への対応力まで確認する必要があります。
特に、収入が途絶えると家賃や食費を支払えなくなる状態では、病気やけが、仕事の減少といった予期しない出来事が、生活全体に大きな影響を与える可能性があります。これは、単に将来の計画がないという意味での「その日暮らし」とは、区別して考えるべき問題です。
【プロの結論】その日暮らしは自由な生き方?向いている人と注意点
「その日暮らし」を肯定的に捉える人は、将来の計画に縛られず、目の前の経験を重視する生き方に魅力を感じている場合があります。予定を細かく決めない旅行、仕事を絞って趣味の時間を確保する生活、短期的な仕事を組み合わせる働き方などが、その例です。
ただし、自由な生活と経済的に不安定な生活は、同じものではありません。自分の意思で将来の予定を減らすことと、生活費を確保できず将来のことを考える余裕がないことは、明確に異なります。
自由なライフスタイルとして成り立たせるための判断基準は、主に次の3点です。
- 生活費を確保できているか:家賃、食費、光熱費、通信費、医療費など、日常生活に必要な支出を無理なく支払えるか。
- 収入が途絶えた場合に対応できるか:貯蓄や利用できる支援など、急な支出や収入減少に備える手段があるか。
- 自分の意思で選んだ生活か:自由を優先して予定を減らしているのか、それとも経済的な事情で将来の選択肢が限られているのか。
この基準を満たしていれば、毎日を大切にする暮らし方を選ぶこと自体に問題はありません。将来の予定を細かく決めないことが、その人にとって心地よい場合もあります。
一方、収入が不安定で、生活費の支払いにも困り、病気や失業に備える余裕がない場合は、自由なライフスタイルという言葉だけで状況を説明することはできません。生活を維持するための支援や、収入・支出の見直しが必要になることもあります。
言葉の使い方にも同じ考え方が当てはまります。相手の生活を肯定的に表現したい場合は「自由な暮らし」「気ままな生活」「今を大切にする生き方」などが適しています。経済的な困難を伝えたい場合は「収入が不安定」「生活費に余裕がない」「貯蓄が難しい」と具体的に表現するほうが、状況を正確に伝えられます。
「その日暮らし」という言葉を使うときに大切なのは、表面的な生活スタイルだけで判断しないことです。本人の価値観と、実際の生活基盤の安定性を分けて考えることで、言葉の意味をより正確に捉えられます。
【その日暮らし意味】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:その日暮らしとは、簡単にいうとどういう意味ですか?
A1:その日に得た収入でその日の生活を支え、先々に備える余裕が少ない暮らしを指します。また、将来の目的や見通しを持たずに日々を過ごすという意味でも使われます。
Q2:その日暮らしの類語や言い換えには何がありますか?
A2:「その日稼ぎ」「日銭暮らし」「一日暮らし」などが経済的な意味で近い表現です。「行き当たりばったり」「その場しのぎ」は計画性のなさを表します。文脈に応じて使い分けましょう。
Q3:その日暮らしの対義語は何ですか?
A3:一語で完全に反対の意味を表す対義語はありません。「安定した暮らし」「計画的な生活」「ゆとりのある生活」などが、意味に応じた対照的な表現です。
Q4:その日暮らしは悪い意味でしか使えませんか?
A4:いいえ。経済的な困窮や将来の見通しのなさを表す場合は否定的な印象が強くなりますが、自由気ままに日々を楽しむ生活を表す場合もあります。ただし、肯定的な意味を伝えたいなら「気ままな暮らし」などの言い換えも有効です。
Q5:その日暮らしと日雇いは同じ意味ですか?
A5:同じではありません。「日雇い」は日単位の雇用形態を指します。「その日暮らし」は、日々の収入に頼る生活や、先々の見通しを持たずに暮らす状態を表します。日雇いで働いていても、生活に十分な余裕がある人はいます。
まとめ:その日暮らしの意味を正しく理解するために
「その日暮らし」は、その日の収入で生活を支え、先々に備える余裕が少ない暮らしを指す言葉です。それに加えて、将来の目標や見通しを持たずに日々を過ごすという意味もあります。辞書の定義や歴史的な用例を確認すると、経済状況と生き方の両方を表す、多面的な言葉であることがわかります。
類語には「その日稼ぎ」「日銭暮らし」「行き当たりばったり」などがあり、対照的な表現には「安定した暮らし」「計画的な生活」などがあります。それぞれ意味の範囲が異なるため、文章の目的に合わせて使い分けることが大切です。
また、2026年時点で公表されている貧困関連の統計は、生活上の困難を理解する手掛かりになりますが、「その日暮らし」という言葉そのものの実態を直接示すものではありません。収入、支出、貯蓄、生活の安定性を分けて考える必要があります。
自由な生き方を表す場合も、経済的な困窮を表す場合も、言葉の印象だけで生活の良し悪しを決めることはできません。何に困っているのか、どのような暮らしを望んでいるのかを具体的に捉えることが、「その日暮らし」という言葉を正しく理解し、適切に使うための判断基準になります。 (出典: その日 暮らし 意味(Yahoo!ニュース))