「どちらにしようかな、天の神様の言う通り」。子どものころ、何かを選ぶときに口ずさんだこの言葉。ところが、その先を思い出してみると、「鉄砲撃ってバンバンバン」「柿の種」「あべべのべ」「けけけのけ」など、人によってまったく違うフレーズが飛び出します。自分が覚えている歌詞が、友人や家族には通じなかった経験がある人もいるのではないでしょうか。
この違いは、単なる記憶違いではありません。「どちらにしようかな」は、子どもたちの遊びのなかで伝承され、地域や世代、遊び仲間によって変化してきたわらべうたの一種です。2016年の学術研究、マイナビ学生の窓口のアンケート、TRiP EDiTORの地域別調査記事、2022年の山陰放送による研究者への取材を手がかりに、2026年時点で押さえておきたい歌詞のバリエーション、都道府県ごとの採集例、地域差が生まれる仕組みを整理します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 歌詞に唯一の正解はない:「どちらにしようかな」「どれにしようかな」の後に続く言葉は、地域や世代によって異なる。
- 代表的な続きは多彩:「鉄砲撃ってバンバンバン」「柿の種」「あべべのべ」「なのなのな」「アブラムシ」などが各地で採集されている。
- 地域差の背景にはリズムがある:子どもが即興で言葉をつなげても、指差し遊びに合う拍や音のまとまりが保たれやすい。
【続きは何が正解?】「どちらにしようかな」の歌詞全文が一つに定まらない理由
「どちらにしようかな」の基本形は、「どちらにしようかな、神様の言う通り」という選び方のフレーズです。「どれにしようかな」「天の神様の言う通り」と歌う場合もあり、冒頭からすでに複数のバリエーションが存在します。
その後の続きには、特定の歌詞だけが正式なものとして決まっているわけではありません。わらべうたの研究で使われる分類では、こうした歌は「唱え歌(となえうた)」にあたります。人や物を選んだり、遊びの順番を決めたりするときに唱える言葉で、音楽作品のように固定された歌詞を正確に再現することよりも、遊びのなかで機能することが大切です。
代表的な一例を挙げると、次のような形があります。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。鉄砲撃ってバンバンバン、もうひとつおまけにバンバンバン」
ただし、これは数あるバリエーションの一つです。「鉄砲」の後に「柿の種」を加える人もいれば、その前に「あべべのべ」や「なのなのな」を挟む人もいます。途中で数字を数えたり、虫や食べ物の名前を続けたりする形も見られます。
つまり、「どちらにしようかな 歌詞 全文」と検索しても、全国共通の完全版が一つ見つかるわけではありません。調べる際には、冒頭の共通部分と、地域・世代によって変わる後半部分を分けて考えると理解しやすくなります。
また、鬼ごっこなどで鬼や順番を決めるときには、「誰にしようかな」と歌い始めることもあります。選ぶ対象に合わせて冒頭の言葉を変えられる点も、この唱え歌の特徴です。
【地域別・都道府県別】「鉄砲」「柿の種」「あべべのべ」はどう違う?
地域差を考えるうえで参考になるのが、TRiP EDiTORが2023年4月25日に公開した「『どちらにしようかな』のあと何て言う?全国で違っていてスゴい【完全版】」と、マイナビ学生の窓口による都道府県別の回答例です。
マイナビ学生の窓口の記事では、2016年1月に大学生・大学院生・専門学校生402人を対象としたインターネットアンケートが実施されました。回答には、同じ都道府県でも複数の歌詞が登場しています。以下は、これらの公開資料に掲載された代表例を地域別に整理したもので、各都道府県の多数派を確定するランキングではありません。
| 地域・都道府県 | 採集・回答された続きの例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 北海道 | 「なのなのなすびの柿の種」「べべべのべのべの柿の種」 | 「なのなのな」などの音遊びと、食べ物の名前を組み合わせる形。 |
| 青森県・岩手県 | 「ぴーちくぱーちく、ひばりのこ」 | 鳥の鳴き声を思わせる言葉が登場する。 |
| 宮城県 | 「ちちんぷいのぷい」「てこてんのすってんてん、さらなべよ」 | 呪文のような響きや、意味をすぐには特定しにくい語句が続く。 |
| 山形県・福島県 | 「鉄砲撃ってバンバンバン、もうひとつおまけにバンバンバン」 | 鉄砲を撃つ擬音を繰り返す型。 |
| 茨城県・埼玉県 | 「鉄砲撃ってバンバンバン、もひとつ撃ってバンバンバン、柿の種をまきました」 | 鉄砲のフレーズに、食べ物や種まきの言葉が加わる。 |
| 鳥取県 | 「あっぷっぷ、鉄砲撃ってバンバンバン、柿の種、ご飯粒、アイスクリームが食べたいよ」 | 食べ物の名前を連ねる長い型も報告されている。 |
| 岐阜県 | 「ぽぽぽいのぽうい」「ぽぽぽいの柿の種」 | 繰り返しの音と「柿の種」を組み合わせる例がある。 |
| 福岡県 | 「ケケケのけむし、アブラムシ」「ゲゲゲのゲ」 | 虫の名前や、特徴的な繰り返し表現が登場する。 |
| 沖縄県 | 「きんこんかんこん、アブラムシ毛虫、鉄砲撃ってバンバンバン、月火水木金土日曜日」 | 虫、鉄砲、曜日など複数の要素をつなぐ例がある。 |
表を見ると、地域差は単に一つの単語が違うだけではないことが分かります。「なのなのなすびの柿の種」のように前半と後半が一体になったものもあれば、「鉄砲撃ってバンバンバン」の後に食べ物や数字を足すものもあります。
さらに、同じ県の回答でも歌詞が一致するとは限りません。マイナビ学生の窓口の調査には、埼玉県の「柿の種をまきました」という型のほか、「柿の種、桃の種、スイカの種」という回答も掲載されています。都道府県の境界線が、そのまま歌詞の境界線になるわけではないのです。
そのため、都道府県別の一覧を見るときは、「この県では必ずこの歌詞を歌う」と解釈するのではなく、「その地域の回答者が実際に覚えていた表現の一例」として読むのが適切です。
【鉄砲撃ってバンバンバン・柿の種・あべべのべ】定番フレーズを分類
各地の歌詞を比べると、言葉の意味だけでなく、音の響きや長さにも共通点が見つかります。TRiP EDiTORの記事では、続きの言葉を大きく「意味のある言葉」と「意味を持たない、または意味が分かりにくい音の並び」に分け、さらに最後の部分を鉄砲系や数字・豆・花などのグループに整理しています。
1.「鉄砲撃ってバンバンバン」系
「鉄砲撃ってバンバンバン」は、各地の採集例で確認できる代表的なフレーズです。「もうひとつおまけにバンバンバン」と繰り返したり、「柿の種をまきました」につなげたりと、後半部分にも複数の型があります。
「バンバンバン」のような擬音は、拍を取りやすく、指差しの動きにも合わせやすい表現です。言葉の意味を細かく理解しなくても、声に出して遊びやすい点が特徴です。
2.「柿の種」「ご飯粒」「アブラムシ」系
こちらは、具体的な物や生き物の名前を使うタイプです。「柿の種」は単独で登場することもあれば、「なのなのなすびの柿の種」のように音遊びと組み合わさることもあります。
マイナビ学生の窓口の回答には、「ご飯粒」「アイスクリーム」「赤とんぼ」「大根」なども登場しています。子どもが日常生活で知っている食べ物や生き物を使えば、新しいフレーズを作りやすくなります。
3.「あべべのべ」「けけけのけ」「なのなのな」系
これらは、意味よりも音の繰り返しや語感が印象に残るタイプです。「あべべのべ」「けけけのけ」のほか、「なのなのな」「べべべのべ」など、似た音を繰り返す表現が各地で報告されています。
「あべべのべ」は「あべこべ」という言葉がリズミカルに変化したものではないか、という考察も紹介されています。ただし、これが確定した語源というわけではありません。意味の分かりにくいフレーズでも、音の気持ちよさや覚えやすさによって伝わっていく可能性があります。
4.数字・曜日・そのほかの追加フレーズ
「1、2、3」と数えたり、「月火水木金土日」と曜日を続けたりする型もあります。数字や曜日は順番が決まっていて、一定のリズムに乗せやすい言葉です。歌詞が長くなるほど、最後にどの選択肢を指すかも変わるため、遊びの結果を調整する役割を持つ場合があります。
このように、同じ唱え歌でも、言葉の意味、音の繰り返し、擬音、数の列挙といった異なる仕組みが組み合わさっています。「あべべのべ」と「柿の種」は一見まったく別物ですが、どちらも選び歌のリズムを作る材料として使われている点では共通しています。
【なぜ地域差が生まれる?】わらべうたの研究から分かる3つの仕組み
歌詞の違いを考えるうえで重要なのが、2016年に森薫が『教材学研究』に発表した論文「となえうたの教材化に関する基礎的検討――『どれにしようかな』の採集調査と『活動理論』をふまえて」です。この研究は、選び歌の採集調査と音楽的な特徴を手がかりに、唱え歌の多様性を検討しています。
また、山陰放送が2022年12月13日に報じた特集では、同志社大学文化情報学部の河瀬彰宏准教授が、地域ごとに歌詞が異なる一方で、リズムには共通するパターンが見られると説明しています。そこから読み取れる仕組みは、主に3つあります。
1.地域や遊び仲間の言葉が歌詞に取り込まれる
唱え歌は、学校の授業で統一された歌詞を教わって覚えるものとは限りません。友達やきょうだいとの遊びのなかで覚え、少しずつ言い換えながら伝えられてきました。地域でよく使われる言葉や、その時代の子どもが親しんでいる物事が歌詞に入る余地があります。
たとえば、虫の名前を入れる型、食べ物を並べる型、鉄砲の擬音を繰り返す型が共存しているのは、歌詞が固定されず、遊び手によって追加・変更されるためだと考えられます。
2.歌詞が変わっても、リズムの枠組みは共有される
河瀬准教授が山陰放送の取材で紹介した分析では、多くの例が「4拍のフレーズ」と「3・5・7拍のフレーズに1拍の休みを加えた形」などに分類できるとされています。もちろん例外はありますが、言葉が違っても、遊びとして成立するリズムには共通性があるという指摘です。
同記事では、島根県松江市の「ぎっこんばっこんぎっこんばっこん、鉄砲撃ってボンボンボン」という例が取り上げられています。前半の繰り返しと、最後の短い擬音の組み合わせを拍で分析すると、歌詞の意味だけでは見えにくい規則性が浮かび上がります。
つまり、地域差は好きな言葉を自由に並べた結果だけではありません。指差しの動きや唱えやすさに合うリズムが土台となり、その枠に地域や遊び仲間の言葉が組み込まれているのです。
3.選択を先延ばしにする遊びの性質がある
唱え歌は、複数の候補から一つを決めるために使われます。選びたいものがすぐに決まらないとき、言葉を少しずつ足して歌を長くすれば、決定までの時間も延びます。
ライブドアニュースが2021年4月12日に紹介した民俗学的な考察では、こうした歌詞の追加について、決定を先延ばしにする心理と言葉遊びの両面から説明しています。たとえば、「柿の種」のようにリズムに合わせやすい言葉を足すことも、選び歌が長くなっていく一因として考えられます。
さらに、国立国会図書館のレファレンス協同データベースには、2005年に埼玉県立久喜図書館が受け付けた「選び歌の発祥と元になった歌を知りたい」という質問が記録されています。紹介された調査では、オリジナルの形を特定できず、自然発生的で即興性の強い唱え歌として関連資料が案内されました。起源となる一つの歌詞を探すこと自体が難しいのは、この伝承の性質と関係しています。
【プロの結論】「正しい歌詞」探しより、地域と世代の違いを楽しむ
「どちらにしようかな」の地域差を読み解くとき、まず押さえたいのは、都道府県別の回答例と、その県で実際にどれだけ使われているかという統計は別物だという点です。
マイナビ学生の窓口の調査は、2016年1月に学生402人から集めた回答です。TRiP EDiTORの記事も、過去の調査や複数の情報源をもとに各地の例を紹介しています。これらはバリエーションの豊かさを知るうえで有用ですが、47都道府県すべての代表的な歌詞を同一条件で調べた全国統計ではありません。
したがって、「東日本はこの歌詞、西日本はあの歌詞」と単純に分けたり、一つの例だけを根拠に県全体の特徴を断定したりするのは適切ではありません。地域による大まかな傾向を考えることはできますが、家庭や学校、友達同士の遊び方による違いも重なります。
一方、東日本では「神様」、西日本では「天の神様」が多いという傾向も、TRiP EDiTORが先行研究を紹介するなかで取り上げています。ただし、これは地域を厳密に二分する法則ではありません。実際に埼玉県で「天の神様」と歌っていた例も紹介されており、地域区分だけで個人の歌詞を決めつけることはできません。
歌詞を比較する際には、次の3点に注目すると、単なる懐かしい言葉の違い以上のものが見えてきます。
第一に、冒頭の言葉。「どちらにしようかな」「どれにしようかな」のどちらを使うか。「神様」「天の神様」など、誰の言う通りにするのかという表現にも違いがあります。
第二に、途中に入る言葉。「あべべのべ」「なのなのな」のような音遊びなのか、「柿の種」「アブラムシ」のような意味を持つ言葉なのか。ここには、語感や地域の言葉、子どもたちが知っているものが反映されます。
第三に、最後の決め方。「鉄砲撃ってバンバンバン」と擬音で締めるのか、数字や曜日を数えるのか。どこまで歌うかによって、指差しの回数や選択のタイミングが変わります。
保育や教育の場で扱う場合にも、特定の歌詞だけを正解として教えるより、子どもたちが知っているフレーズを持ち寄り、拍や音の繰り返しを比べる活動にすると、わらべうたの特徴を理解しやすくなります。森薫の2016年の研究が扱った教材化という観点からも、歌詞の暗記だけでなく、実際の遊び方やリズムに目を向けることには意味があります。
「自分の地域ではこう歌っていた」という記憶は、その人が子ども時代に参加していた遊びの記録でもあります。家族や友人と歌詞を比べるときは、どちらが正しいかを競うのではなく、どこで、誰と、どのように覚えたのかを聞いてみると、地域差と世代差の両方が見えてきます。
【どちらにしようかな天の神様の言う通り】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「どちらにしようかな、天の神様の言う通り」の続きは何が正解ですか?
A1:全国共通の正解はありません。「鉄砲撃ってバンバンバン」「柿の種」「あべべのべ」「なのなのな」など、地域や世代によってさまざまな続きがあります。自分が覚えている歌詞も、数ある伝承の一つです。
Q2:「どちらにしようかな」と「どれにしようかな」は違う歌ですか?
A2:どちらも、候補から一つを選ぶときに使われる唱え歌の表現です。冒頭の言葉が異なるほか、神様の呼び方や後半の歌詞にもバリエーションがあります。
Q3:「鉄砲撃ってバンバンバン」や「柿の種」はどの都道府県の歌詞ですか?
A3:複数の地域で採集・回答例が報告されています。たとえば、マイナビ学生の窓口には茨城県や埼玉県の「鉄砲」と「柿の種」を組み合わせた回答が掲載されています。ただし、特定の県だけで歌われる表現ではなく、県内でも違いがあります。
まとめ:2026年も受け継がれる「どちらにしようかな」の地域差
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り」の続きには、「鉄砲撃ってバンバンバン」「柿の種」「あべべのべ」「けけけのけ」など、多彩な表現があります。都道府県別の調査記事や学術研究を照らし合わせると、地域によって歌詞が異なる一方、指差し遊びに合うリズムや音の繰り返しには共通する特徴が見られます。
歌詞が一つに定まらないのは、間違いが広まったからではありません。子どもたちが遊びながら言葉を変え、友達や家族を通じて伝えてきた唱え歌だからこそ、さまざまな形が残っているのです。
全国の違いを調べるなら、都道府県別の例を参考にしながら、地域内の違いや世代差にも目を向けることが大切です。そして、自分の歌詞を誰かと比べたとき、違いを正誤で判断するのではなく、それぞれの記憶として受け止めることが、このわらべうたをより深く楽しむ方法です。
主な参考資料:森薫「となえうたの教材化に関する基礎的検討――『どれにしようかな』の採集調査と『活動理論』をふまえて」(『教材学研究』第27巻、2016年)、マイナビ学生の窓口「【都道府県別】『どちらにしようかな……』の続きはなんて言う? 地域ごとに違いがハッキリ!」、TRiP EDiTOR「『どちらにしようかな』のあと何て言う?全国で違っていてスゴい【完全版】」(2023年4月25日)、山陰放送「『どちらにしようかな天の神様の言う通り…』この後に続くフレーズは?」(2022年12月13日)、国立国会図書館レファレンス協同データベース「『どれにしようかな』という選び歌の発祥と、元になった歌を探している」。 (出典: どちら に しよう かな 天 の 神様 の 言う 通り(Yahoo!ニュース))