パートやアルバイトとして働いていても、条件を満たせば育児休業給付金、いわゆる「育休手当」を受け取れます。正社員であることや、フルタイム勤務であることは必須ではありません。重要なのは、雇用保険に加入しているか、育休開始前の勤務実績が給付要件を満たしているか、そして法律上の育児休業を取得できるかという3点です。
2026年10月現在、厚生労働省の「Q&A~育児休業等給付~」令和8年8月版では、育児休業給付金の支給要件や有期雇用労働者の取り扱いが示されています。休業開始から180日目までは原則として休業開始前賃金の67%、181日目以降は50%が支給される仕組みです。さらに、2025年4月に始まった出生後休業支援給付金など、育児を経済面から支える制度もあります。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:パートでも雇用保険の被保険者で、育休開始前2年間に所定の勤務実績が12か月以上あれば、育休手当を受給できる可能性がある。
- 要点2:給付率は原則67%から50%へ切り替わる。育休中に給与が支払われる場合は、減額や不支給になることがある。
- 要点3:勤続1年未満や有期契約だからといって一律に対象外になるわけではない。育休を取得できる条件と給付金の支給条件を分けて確認することが大切。
【結論】パートでも育休手当はもらえる?2026年の支給条件を確認
結論からいうと、パートでも育児休業給付金を受け取れます。厚生労働省が示す基本的な支給対象は、雇用保険の被保険者で、原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得し、所定の勤務実績などの条件を満たす人です。
正社員とパートの違いよりも、雇用保険の加入状況や休業前の勤務実績が重要になります。週の労働時間が短くても、雇用保険の加入要件を満たしていれば、パートという雇用形態だけを理由に対象外になることはありません。
まずは、次の3つを確認してください。
- 勤務先で雇用保険の被保険者になっているか。
- 育休開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上、または就業時間数が80時間以上ある月が12か月以上あるか。
- 育児休業を正式に取得でき、有期契約の場合は契約期間に関する要件も満たしているか。
ただし、育児休業を取得する権利と、育児休業給付金を受け取る資格は別の制度です。育休を取得できても、雇用保険の加入期間などが足りなければ給付金が支給されない場合があります。反対に、雇用保険に加入していても、勤務先との労使協定などによって育休の取得に制限が生じる場合があります。
そのため、「パートだから無理」「1年働いていないから無理」と自己判断するのではなく、雇用保険の加入状況、勤務実績、育休取得条件を順番に確認することが大切です。
【最初の関門】パートの雇用保険は週20時間以上・31日以上の雇用見込みが基本
育休手当を受け取るための最初の関門は、雇用保険への加入です。厚生労働省によると、一般的な雇用保険の加入要件は、原則として次の2つです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
- 31日以上の雇用見込みがあること。
この条件に該当すれば、パートやアルバイトという雇用形態であっても、原則として雇用保険の被保険者になります。本人が加入を希望するかどうかだけで決まるものではなく、勤務先には加入手続きが必要です。
例えば、週4日、1日5時間勤務するパートは、所定労働時間が週20時間になります。31日以上の雇用見込みもあれば、ほかの適用除外に該当しない限り、雇用保険の加入対象となる可能性があります。
一方、週3日、1日5時間勤務であれば週15時間です。通常の加入要件を満たさないため、原則として雇用保険の被保険者にはならず、雇用保険から支給される育児休業給付金も対象外になります。
ここで注意したいのが、健康保険・厚生年金保険と雇用保険の違いです。2026年10月には短時間労働者の社会保険に関する賃金要件が撤廃されましたが、これは雇用保険の加入要件とは別の話です。社会保険に加入しているかどうかだけで、育休手当の受給資格を判断することはできません。
勤務時間が契約上は週20時間未満でも、実際の労働条件や契約変更によって加入要件を満たすケースもあります。反対に、繁忙期だけ一時的に勤務時間が増えたからといって、必ず加入対象になるわけでもありません。まずは雇用契約書や労働条件通知書で「週所定労働時間」を確認し、勤務先の担当者に雇用保険の資格取得状況を尋ねましょう。
【勤務実績の数え方】育休開始前2年間の12か月と「11日・80時間」の条件
雇用保険に加入していても、それだけで育休手当が支給されるわけではありません。もう一つの重要な条件が、育児休業開始前2年間における勤務実績です。
厚生労働省の「Q&A~育児休業等給付~」では、育児休業開始日前2年間に、次のいずれかを満たす月が12か月以上あることを基本的な支給要件としています。
- 賃金支払基礎日数が11日以上ある月。
- 賃金支払基礎日数が11日未満の場合は、就業時間数が80時間以上ある月。
つまり、単純に「同じ会社で1年間働いたか」だけを確認する制度ではありません。育休開始前2年間のうち、雇用保険の給付要件上、勤務実績として数えられる月が12か月以上あるかどうかがポイントです。
例えば、週3日、1日6時間勤務している人は、1週間の所定労働時間が18時間です。この条件では原則として雇用保険に加入できませんが、別の契約条件によって加入している場合などは、加入資格と勤務実績をそれぞれ確認する必要があります。
また、週20時間以上働いて雇用保険に加入していても、勤務日数が少ない月や、休職などで賃金の支払いが少ない月は、12か月の勤務実績に算入できないことがあります。給与明細だけで判断するのではなく、出勤簿やタイムカード、雇用保険の加入履歴も確認しておくと安心です。
病気や第1子の育児休業などによって、育休開始前2年間に30日以上続けて賃金を受け取れなかった期間がある場合は、確認対象期間が延長され、通常の期間では不足していた勤務実績を満たせるケースもあります。該当する事情がある人は、ハローワークで個別に確認してください。
支給条件を整理すると、次のようになります。
| 確認項目 | 基本的な条件 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| 雇用保険 | 原則、週20時間以上・31日以上の雇用見込み | 雇用保険の被保険者資格を取得しているか |
| 育休前の勤務実績 | 育休開始前2年間に12か月以上 | 同じ会社での勤続年数だけでなく、対象となる月数を確認する |
| 月ごとの勤務実績 | 賃金支払基礎日数11日以上、または所定の条件下で就業時間80時間以上 | 出勤日数や就業時間、賃金台帳を確認する |
| 休業中の就業 | 支給単位期間ごとに原則10日以下、10日を超える場合は就業時間80時間以下 | 育休中に働いた日数と時間を確認する |
| 有期雇用 | 契約期間に関する追加要件あり | 契約満了日や更新予定を確認する |
なお、育休中の就業日数・時間にも制限があります。育児休業給付金は休業中の生活を支える制度であるため、通常の勤務に戻っている場合や、就業日数・時間が支給要件を超える場合には、支給されないことがあります。
【いくら受け取れる?】育休手当の67%・50%と給与80%の境界線
パートの育休手当の支給額は、原則として育休開始前の賃金を基に計算されます。勤務時間が短く、月収が正社員より少ない場合でも、支給率そのものは基本的に同じです。
厚生労働省が示す育児休業給付金の支給率は、次のとおりです。
- 育休開始から180日目まで:休業開始時賃金の67%
- 181日目以降:休業開始時賃金の50%
計算の基礎となる休業開始時賃金日額は、原則として休業開始前6か月間の賃金を基に算定します。通常は、対象となる賃金総額を180で割って計算し、そこに支給対象日数と給付率を掛けます。産前産後休業に続けて育児休業を取得する女性の場合は、原則として産前休業開始前の賃金が算定対象になります。
例えば、計算の基礎となる賃金月額が15万円で、休業中に給与が支払われず、上限・下限などによる調整もないと仮定した場合、支給額の目安は次のとおりです。
- 開始から180日目まで:15万円×67%=月額10万500円程度
- 181日目以降:15万円×50%=月額7万5,000円程度
実際の支給額は、算定対象となる賃金や支給日数、給与の支払い状況などによって変わります。また、給付額の計算に用いる休業開始時賃金日額には上限があり、厚生労働省の2026年度の案内では、2026年8月1日から2027年7月31日までの上限額は16,540円です。上限・下限などの金額は改定されるため、最新の案内を確認してください。
もう一つ重要なのが、育休中に勤務先から給与が支払われる場合の取り扱いです。休業中に少しでも給与が支払われたら必ず不支給になる、というわけではありません。
厚生労働省の支給額に関する説明では、休業中の賃金が休業開始時賃金月額に対して一定割合を超えると、給付金が減額されます。基準は、開始から180日目までが13%、181日目以降が30%です。これらの割合を超え、80%未満の賃金が支払われた場合は、原則として賃金と給付金の合計が休業開始時賃金月額の80%相当額となるよう調整されます。賃金が80%以上の場合は、育児休業給付金は支給されません。
ここでいう80%は、育休中の給与が休業開始前の賃金月額に対してどの程度あるかという基準です。「給付金が80%もらえる」という意味ではありません。
なお、2025年4月には「出生後休業支援給付金」が創設されました。子の出生直後の一定期間内に本人と配偶者がそれぞれ14日以上の育児休業を取得するなどの条件を満たすと、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が追加で支給されます。配偶者の育休取得を要件としない例外もあります。
この給付金と通常の育児休業給付金を合わせると、対象期間中は休業開始前賃金の80%相当となり、非課税であることや社会保険料の免除などにより、手取り10割相当になる仕組みです。ただし、すべてのパートが自動的に追加給付を受けられるわけではなく、雇用保険の受給資格や取得期間などの要件を満たす必要があります。
【勤続1年未満・有期契約】パートの育休手当はどこまで認められる?
「パートで勤続1年未満だから育休は取れない」「契約社員だから育休手当はもらえない」と考えている人もいますが、どちらも一律には正しくありません。勤続年数と雇用契約の種類は、育児休業を取得する条件と、給付金を受け取る条件に分けて確認する必要があります。
勤続1年未満の場合、育児・介護休業法では、労使協定を締結している場合に、継続雇用1年未満の労働者を育児休業の対象から除外できる仕組みがあります。そのため、勤続1年未満であっても、必ず育休を取得できないとは限りません。勤務先が労使協定による除外を定めているかどうかが判断材料になります。
一方、育休手当の受給資格については、育休開始前2年間のうち、所定の勤務実績が12か月以上あるかどうかが重要です。これは「今の会社で丸1年働いたか」という条件とは異なります。雇用保険の加入履歴や、前職の期間を通算できるかなども含めて確認しましょう。
有期雇用のパートや契約社員については、契約が更新される場合を含め、子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないことが、育児休業を取得するうえでの基本的な条件です。
育児休業給付金にも有期雇用労働者向けの追加要件があります。厚生労働省のQ&Aでは、原則として子が1歳6か月に達するまでの間に契約期間が満了することが明らかでないことが求められています。育休を延長して1歳6か月以降も取得する場合は、2歳までの契約期間に関する要件も確認が必要です。
したがって、契約期間が決まっていること自体が不支給の理由になるわけではありません。契約更新の予定や雇止めの有無、勤務先の労使協定、雇用保険の加入履歴などを組み合わせて判断します。
育休手当がもらえない主な理由を整理すると、次のようになります。
- 雇用保険の被保険者ではない。
- 育休開始前2年間の勤務実績が支給要件を満たさない。
- 勤務先の労使協定などにより育休を取得できず、対象となる育児休業を取得していない。
- 有期雇用で、契約期間に関する要件を満たさない。
- 育休中の就業日数・時間が上限を超えている。
- 育休中に支払われる給与が基準に達し、給付金が減額または不支給になる。
また、受給資格の確認時点ですでに退職する予定だった場合は、支給対象外になることがあります。ただし、受給資格を得た後に退職することになった場合は、原則として、それまで受け取った給付金を返還する必要はないと厚生労働省のQ&Aで説明されています。退職の予定や時期が関係する場合は、個別の事情をハローワークに相談してください。
【申請方法と産休手当との違い】ハローワークで何を確認すべき?
育児休業給付金の申請先は、勤務先の所在地を管轄するハローワークです。一般的には、勤務先が必要書類を取りまとめ、事業主を通じて申請します。パート本人が最初からすべての手続きを進めなければならないわけではありません。
申請の基本的な流れは次のとおりです。
- 勤務先に育児休業の取得を申し出る。
- 雇用保険の加入状況と、育休開始前の勤務実績を確認する。
- 勤務先が受給資格の確認や初回申請に必要な書類を準備する。
- 勤務先がハローワークへ申請する。
- 支給決定後、指定した口座に給付金が振り込まれる。
初回申請も同時に行う場合、原則として育児休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日までが申請期限です。女性が産後休業から引き続いて育児休業を取得する場合は、育児休業開始日の取り扱いが異なるため、勤務先に期限を確認してください。
申請に必要な書類には、育児休業給付受給資格確認票・支給申請書、休業開始時賃金月額証明書、賃金台帳、出勤簿やタイムカードなどがあります。子の出生や出産予定日を確認できる母子健康手帳などの書類も必要です。実際の提出書類は、申請内容や勤務先の手続き状況によって異なります。
2回目以降の申請は、原則として2か月ごとに行います。申請が済んでいるか分からない場合は、勤務先の人事・労務担当者に確認しましょう。会社が手続きを進めていない、加入資格について説明がないといった場合は、ハローワークに相談できます。本人が申請することも、一定の条件の下で認められています。
ここで混同しやすいのが、産休中に受け取れる「出産手当金」と、育休中に受け取れる「育児休業給付金」です。名前は似ていますが、支給元も対象者も異なります。
- 出産手当金:健康保険から支給される給付。原則として健康保険の被保険者本人が、出産のために仕事を休み、その期間に給与を受けられない場合などに対象となる。支給期間は、出産日以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産日の翌日以後56日目までの範囲。
- 育児休業給付金:雇用保険から支給される給付。育児休業を取得し、雇用保険の加入期間など所定の要件を満たした人が対象となる。
出産手当金は、勤務先の健康保険に本人として加入しているかどうかが大きなポイントです。配偶者の健康保険の扶養に入っている人は、原則として出産手当金の対象になりません。一方、育児休業給付金は雇用保険の制度であり、健康保険の被保険者かどうかとは別に受給資格を判断します。
そのため、パートで出産を控えている人は、健康保険の加入先と雇用保険の加入状況をそれぞれ確認しておくことが大切です。産休中に利用できる制度と育休中に利用できる制度を分けて把握すると、休業期間中の収入を見通しやすくなります。
【パート育休手当】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:パートで週20時間働いていれば、必ず育休手当をもらえますか?
A1:いいえ。週20時間以上で31日以上の雇用見込みがあることは、雇用保険の基本的な加入要件です。育休手当を受け取るには、それに加えて育休開始前2年間の勤務実績12か月以上など、ほかの支給要件も満たす必要があります。
Q2:パートで勤続1年未満でも育休手当はもらえますか?
A2:可能性はあります。勤続1年未満という理由だけで、育休手当が必ず不支給になるわけではありません。ただし、勤務先の労使協定によって育休取得の対象から除外される場合があり、給付金についても雇用保険の加入履歴や勤務実績を確認する必要があります。
Q3:有期契約のパートでも育休手当はもらえますか?
A3:受給できる場合があります。契約更新の有無や契約満了日などについて、育児休業の取得条件と給付金の受給要件を満たす必要があります。契約書や更新条件を確認し、判断に迷う場合は勤務先やハローワークに相談してください。
Q4:育休中に給与が支払われたら、育休手当はもらえなくなりますか?
A4:給与が支払われたからといって、必ず不支給になるわけではありません。給与額に応じて給付金が減額される場合があり、休業開始前賃金月額の80%以上に相当する賃金が支払われる場合は、原則として給付金は支給されません。勤務日数や就業時間の条件も確認が必要です。
Q5:育休手当はいつ、どこに申請すればよいですか?
A5:原則として勤務先を通じて、事業所の所在地を管轄するハローワークに申請します。初回申請の期限は、育児休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日までが基本です。勤務先に申請時期を確認し、手続きが進んでいるか把握しておきましょう。
まとめ:パートの育休手当は「雇用形態」より加入状況と勤務実績で判断する
2026年現在、パートでも雇用保険に加入し、育休開始前2年間の勤務実績や休業取得などの要件を満たせば、育児休業給付金を受け取れます。正社員でないことや、契約期間が定められていることだけで、一律に対象外になるわけではありません。
確認すべきなのは、雇用保険の加入要件である週20時間以上・31日以上の雇用見込み、育休開始前2年間における12か月以上の勤務実績、そして育児休業を取得できる条件です。支給額は原則として開始から180日目まで67%、181日目以降は50%で、休業中の給与や算定上限によって実際の金額が変わります。
育休手当をもらえないと思い込んで申請を諦める前に、勤務先に雇用保険の加入状況と育休取得条件を確認し、必要に応じてハローワークに相談しましょう。産休中の出産手当金や、2025年4月に始まった出生後休業支援給付金なども含めて制度を把握すれば、出産・育児による収入の変化に備えやすくなります。
制度の詳細を確認する際は、厚生労働省の「Q&A~育児休業等給付~」令和8年8月版、育児休業制度特設サイト、協会けんぽの出産手当金に関する案内を参考にしてください。自分の勤務条件に当てはめて確認することが、受給資格を見落とさないための第一歩です。 (出典: パート 育休 手当(Yahoo!ニュース))